少子高齢化が進む日本において、どの業界でも人手不足は深刻な問題です。2017年11月に、1人の求職者に対し何件の求人があるかを示す有効求人倍率3.46倍(全職種平均1.41倍)を叩き出した介護業界は、その中でも抜きん出ていると言えるでしょう。政府からも介護人材の確保のための対策が検討されていて、様々な施策が講じられるも効果は薄いのが現状。今回はそんな介護人材不足を外国人労働者を受け入れることにより解消しようとする試みについて、お話ししたいと思います。
「介護」が足りない日本
介護保険が施行された2000年、介護人材は55万人から始まり、2013年度にはその数は170万人以上にまで増加しました。それでも介護人材が足りていないのは、それ以上に高齢者が増えているからです。団塊の世代が後期高齢者(75歳以上)となる2025年には253万人の需要が見込まれているのに対し供給見込みは215万人と、38万人の格差が生じると懸念されています。
介護系で唯一の国家資格「介護福祉士」は約150万人いますが、介護職に従事している者はおよそ半数程度に止まっています。離職率については以前は高かったものの、近年では徐々に全産業平均に近づいてきています。と言っても全職種の平均勤続年数が12年なのに対し、介護施設では7年、訪問介護員では5年と依然その差は歴然です。
厚労省は介護人材確保のための予算を組んでいて、「介護職員の処遇改善」「離職者の復職喚起」「新規参入の促進」「離職防止」に取り組んでいます。その一方、2015年度の介護報酬減額(来年度は微増)や人員・設備基準の締め付けにより、廃業する事業者が続出。需要の増加に反し、サービスが提供できない状態になりつつあり、介護サービスを「資源」として争奪する時代が間もなく来るでしょう。
外国人労働力による介護
介護従事者が最も求めるものは「やりがい」と言う人もいますが、あくまでも衣食が足りた上でのこと。介護従事者の給与水準は、全職種の平均年収よりも200万円以上低いとも言われています。また離職理由として賃金の問題以外に「仕事がきつい」「人間関係」などは恒常的に上位を占めていますが、妥当な給与により精神的な負担軽減に繋がるのではないかとも思います。
従って人材不足の元凶は、給与問題に尽きると言わざるを得ません。しかし人材確保や事業継続に結び付くだけの介護報酬増額は期待できず、つまり高齢者のための財源は見い出せないことを意味しています。
十分な給与ではないためか、自国の社会福祉であっても日本人ではなく、外国人に白羽の矢が向けられました。
EPA(経済連携協定)とは、物資や知的財産、人材など幅広い分野での交流を目的とした条約で、特定の国間での関係を強化するもの。日本政府はフィリピンやインドネシアなどとのEPAにおいて、外国人の介護人材の受け入れることとしています。受け入れた外国人は日本の介護施設で3年間の就労を経て国家試験に合格すれば、継続して日本で働ける在留資格を取得することになりますが、この短期間の間に言葉の問題も含め試験を通過しなければならないため、合格率は低い状態となっています。
まとめ
高齢者が必要な介護を受けられない国とならないよう、外国人のマンパワーに頼り始めた日本。対人援助分野である介護に、国民を交えた公の議論もなしに、外国人の手を借りるということは、果たして得策なのでしょうか。日本の高齢者人口は2040年の3,868万人をピークに緩やかな減少を始めると見込まれていますが、少子化により労働力が増加する兆しは見えません。いずれ必要数が減る介護人材を国内で育成するのではなく、当面の要員として外国人を起用するという、極めて短期的な展望であるかのように思えます。そのような手段に踏み込むということは、まさに「介護亡国」になるのを避けるために講じた苦肉の策なのかもしれません。
ライタープロフィール
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介護福祉士、介護支援専門員。
小さな在宅系事業所で働いています。
介護に関わる全ての方々に、明るい未来を。