総務省が発表した2017年10月15日現在の推計によると、65歳以上の高齢者は3,514万人で、日本の全人口1億2,671万人の27.7%を占めています。さらに2025年になると高齢者率は30%を超えると考えられていて、国民の3人に1人が高齢者になると予想されています。そんな中、高齢者による犯罪の増加が問題視されていて、「安全大国」を維持するために、早急な対応が要されています。今回は日本における高齢者の犯罪について、お話ししたいと思います。
減る犯罪、増える高齢者犯罪
2017年11月、法務省が公表した「犯罪白書(2016年データ)」によると、刑法犯の認知件数は戦後初めて100万件を下回り、99万6,120件と14年連続で減少しているとしました。検挙人数も戦後最小の22万6,376人を記録しましたが、そのうち高齢者は4万6,977人。全体の20.8%(1997年/4.1%)と初めて2割を超えた結果となったのです。
入所受刑者数も2万467人と、こちらも戦後最小であったのに対し、高齢者は2,498人。1997年から4倍以上になり、女性に限っては9倍以上にまで膨れ上がりました。再入所率も全体で59.5%、高齢者では70%以上にまで上がります。
介護施設化する刑務所
高齢者犯罪の中で、最も多いのは「窃盗」です。その検挙人数は3万3,979人と、高齢者の刑法犯検挙数の7割に値します。特に女性高齢者では約9割が窃盗、約8割が万引きとなっています。
傷害・暴行のようなより重い犯罪も前年より増加していて5,823件と1997年の17倍以上。また年々減少している交通事故ですが、高齢者が関与している割合は上昇傾向にあり、総件数の22.3%までに至ります。
刑務所で服役中の高齢者も増加しています。20年前は男性500人、女性30人程度であったのに対し、現在では男性は5倍、女性においては11倍にまで膨れ上がっています。刑務所によっては高齢者の比率が高く、手すりの設置や毎日のリハビリが余儀なくされ、紙おむつの片付けるのも刑務官の仕事となっているなど、介護施設さながらの環境ではないかと目を疑うほどです。
日本と同様に高齢化が進む外国、アメリカやドイツ・スウェーデンなどでは高齢に伴い犯罪率は低下、もしくは著しい犯罪率の上昇は認められず、高齢者の犯罪の3分の2が初犯である点は日本の特徴と言えるかもしれません。
貧困と認知症=キレやすい高齢者
高齢者による犯罪は、今やテレビなどで頻繁に取沙汰されていますが、皆さまは日常生活で「キレる高齢者」を目にしたことはありませんか?近隣とのトラブルで包丁を持ち出したり、電車の座席に座っている少年を蹴飛ばしたり、タバコのポイ捨てを注意した子供の首を絞めたり、近づくのも躊躇するような高齢者の事例は後を絶ちません。
脳の器質的障害によって引き起こされる認知症。加齢とともに低下するのは筋力や視力のみならず、脳の性能も衰えます。脳の中で感情を司る前頭葉は理性をコントロールする役割を担っていて、この部分が萎縮すると自分の気持ちが制御できなくなります。介護施設では介護職員の98%が、高齢者からセクハラや暴力を受けたことがあると答えています。
また年金暮らしの高齢者は決して裕福であるとは言えず、窃盗や万引きなどの犯罪に手を染めるケースに繋がります。精神的余裕もなくなり、イライラした感情が募り、キレるという負のスパイラルもこうして形成されているのかもしれません。犯罪白書によると、第二次世界大戦後に少年犯罪が増加したことが記されていますが、この少年達が現在高齢者になっているのが要因であるという見解もあります。
まとめ
人間社会においてその数が増えれば、犯罪数もつられて増加します。日本最大のインターネット掲示板「2ちゃんねる」への書き込みから犯罪へと繋がったことがありました。その責任を問われた創始者ひろゆき氏はこう返答しました。「東京都の犯罪全ては東京都知事の責任なの?」高齢者の犯罪で問題なのは、犯罪に対しての認識能力不足と責任の所在です。これからますます高齢化が進む日本。「お年寄りを大事にする精神」と「国民が安心して過ごせる社会」との共存は、老いも若きもそれぞれが手を取り、真摯に目指さなければなりません。
ライタープロフィール
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介護福祉士、介護支援専門員。
小さな在宅系事業所で働いています。
介護に関わる全ての方々に、明るい未来を。