「笑」を含むことわざは多くありますが、その中でも有名なのは「笑う門には福来る」ではないでしょうか。これは「笑っている人には自然と幸福が訪れる」という意味のことわざですが、他にも「笑いは人の薬(=笑う事は心と体の健康に繋がる)」ということわざがあるのをご存知でしょうか?
「笑い」がもたらす健康効果は医療や介護の現場で実証されていて、最近では多くの関連文献も出版されています。一方、日本が誇る「お笑い」の聖地大阪でも、「笑い」に関する興味深い取り組みが進められています。
高齢者向け「お笑い」プログラム
言わずと知れた「笑い」の総合商社「吉本興業」は1月10日、大阪府枚方市と市内にある大阪精神医療センターと手を組み、「笑い」を主軸に置いた認知症予防のためのプログラムを実施することを発表しました。
若手芸人と高齢者が一緒に参加し行う運動メニューとして、二人三脚の足を結ぶ縄をティッシュペーパーに変えた「二人そっと三脚」や、目隠しをしたゾンビが鈴を付けた人を追いかけ回す「ヒトゾン」などの競技が用意されています。加えて高齢者向けのコントには、吉本新喜劇の川畑泰史座長や座員たちの服装が次々替わり、その替わった箇所を当てるゲーム、うどん屋での客の複雑な注文を覚えるゲームなどが盛り込まれています。またプログラム実施前に認知機能テストを行い、終了後のテスト結果と比較することで「笑い」による認知症への効果を科学的に検証する事とし、今年の夏頃までにその結果を公示する予定。
既に昨年9月より同センターにて開始されている認知症予防プログラムに参加している60歳以上の枚方市民30人を対象にしたこの「お笑い」プログラムは、今年1月~3月の間で計4回実施されます。またセンター監修の新喜劇には、枚方市民100人を追加募集することが予定されています。
「笑い」が生み出す健康効果
「笑い」についての研究は、古代ギリシアにて既に始まっていたと言われています。以降、哲学者や詩人、心理学者や社会学者により、その考察は進められてきました。現代でも、精神科学や神経科学の分野からも注目を集めていて、「笑い」が体にどう作用するのかなど、解明されつつあります。
若くて健康な人でも、体内に1日に数千個のがん細胞が発生します。これらのがん細胞や体内に侵入してくるウィルスなど、人体にとって有害な物質を駆除しているのがリンパ球の1種である「ナチュラルキラー(NK)細胞」です。
つまりこのNK細胞の活動が活発であると、がんや感染症にかかりにくくなると言えるのです。
笑うと免疫力を支配する間脳が刺激され、神経伝達物質である「神経ペプチド」が多く作り出されます。この「神経ペプチド」は血液やリンパ液により体中に運ばれNK細胞に付着し、それによりNK細胞を活発にさせます。
つまり「笑い」が免疫力を高めるということになるのです。
免疫力とは、高すぎても問題が生じます。強すぎる免疫機構は有害物質にだけでなく、それ以外の組織にも攻撃を与えるため、関節リウマチや膠原病などの自己免疫疾患の誘因となります。
よって免疫力とは強すぎず弱すぎず、適度な状態が不可欠なのですが、「笑い」にはその均衡を保つ効果もあるというこよが、実験により実証されました。
笑う事は有害物質を退治するに留まらず、更に免疫バランスも調整できるというわけです。
まとめ
「笑い」とは全く不思議なもので、その根拠やカタチは異なれど、老若男女に寄り添っているもの。その「笑い」を扱う大企業が「高齢者向け事業」に乗り出しました。人口の27%を占める高齢者は、現在日本に約3,500万人います。この市場を開墾・開拓するためにも、それぞれの分野が自身の強みを高齢者サービスに生かす試みは、今後の日本経済にも好影響を与えてくれるのではないでしょうか。
ライタープロフィール
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介護福祉士、介護支援専門員。
小さな在宅系事業所で働いています。
介護に関わる全ての方々に、明るい未来を。