総務省の発表によると、携帯電話などのモバイル端末やパソコンの世帯普及率は9割を超え、モバイル端末の中でもスマートフォンのそれは7割を超えています。今やほとんどの人が持っていると言っても過言ではないスマートフォン。その使い道は通話やインターネットに限らず、広告効果を計測したり遠隔で自動車を動かしたりと、開発されるアプリケーションにより無限に広がっています。
今回はそんなスマートフォンのアプリ開発を手がけた「コンピューターおばあちゃん」についてお話ししたいと思います。
プログラミングとは?
プログラミングとは、人間が意図した働きをするようコンピューターに指示を出す行為です。コンピュータープログラムを作成することで、コンピューターはそこから命令(処理)を読み取り、設計者の志向した作業を忠実に遂行します。スマートフォンで使用されているアプリ(TwitterやInstagramなど)や家庭用ゲームはプログラミングにより作成さていて、現代のIT社会において私たちと密接な関係にあると言えます。2020年からは小学校におけるプログラミング教育が必須となり、幼少期よりそのスキルを身に付けることが開始されます。
82歳のプログラマー
スマートフォン業界で独走中のiPhoneは、言わずと知れたデジタル電化製品やソフトウェアなども手がける多国籍企業アップル社(Apple Computer, Inc.)によるもの。Appleは毎年自社製品であるmac関連の開発者に向けたイベント「Worldwide Developers Conference(WWDC)」をサンフランシスコで開催していて、その中の基調講演は新製品のローンチなど、世界が注目する内容が発表されることで有名です。WWDC2017では、その基調講演の冒頭で1人の日本人が紹介されました。
それが82歳の現役プログラマー、若宮正子さんです。
若宮さんがパソコンと出会ったのは60代の頃。定年まで銀行を勤め上げ、若宮さんを待ち受けていたのは母親の介護でした。自宅での介護には終わりがなく、介護に追われる日々が続く中で家に閉じこもりがちになった若宮さんを救ったのがインターネットでした。元来人と接するのが好きな若宮さんは、インターネットを通して自宅に居ながら他人とコミュニケーションが取れるよう、実に3ヶ月をかけて接続にこぎつけたそうです。
パソコンを使った可能性への好奇心は堰を切り、表計算ソフトExcelを使ってイラストや模様を作成。Excelアーティストとして一躍脚光を浴びました。その後、同世代の方々に向けたパソコン教室を開き、パソコンやスマートフォンの使い方からウィルスソフトの脅威などを解説し、分かりにくいポイントを押さえた講座は、参加者から高い評価を得ています。
iPhoneアプリ「hinadan」
若宮さんがプログラミングを始めたのは2016年、シニア向けの面白いアプリを開発したいという気持ちがきっかけ。とは言え、HTMLを使ったWebページなどの作成経験はあったものの、プログラミングはまったく初めてでした。そこで知人のプログラマー、小泉さんにアプリ作成を依頼したところ、「自分で作る」ことを強く勧められたと言います。アプリ開発の教育なども行っている小泉さんはアプリ公開後の展望も視野に入れ、「シニアが作ったアプリ」という看板は大きな効果が期待できると予想。かしくて若宮さんは小泉さんという協力な助っ人のもと、雛人形を正しい位置に移動させるiPhoneのゲームアプリ「hinadan」の開発に成功し、2017年2月(当時81歳)、見事Appleの審査を通り、晴れてApple Storeで公開されることになったのです。
まとめ
プログラミングに限らず、新しいことにチャレンジする精神は、生きる意欲に直結します。今回はプログラミングという一見極めて難解でありそうな事柄に挑んだ若宮さんは、やはり賞賛されるに値するでしょう。しかし、この挑戦の本当の意義は、高齢者と若者との「共同作業」にあったのではないでしょうか。「hinadan」が世に送り出されるにはどちらの才力も必要であり、その接点にこそ、老若の垣根を越えたエネルギーが潜んでいるのです。
ライタープロフィール
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介護福祉士、介護支援専門員。
小さな在宅系事業所で働いています。
介護に関わる全ての方々に、明るい未来を。