ご自宅におられるお年寄りが、サービスを利用されるとき、すぐに馴染まれる方もおられますし、なかなか馴染むことができずに、時間がかかる方もおられます。せっかくサービスを利用していただくのですから、できるだけ楽しく過ごしていただきたいとだれもが思いますが、では、どうしたらいいのでしょうか。
1. 「自分ならどうなのか」と考える
もし自分が、だれも知らないところに連れて来られたらどうなのか考えてみましょう。まわりは知らない人ばかりで、とても心細いですよね。おまけに、他の人同志は知り合いのようで、自分だけがよそもののように思ってしまいませんか。まして、利用者は、ご自分の身体を思うように動かすことができず、ただ、介助してもらってでしか自分の思うような行動をとることができない状態にあるので、なおさら不安は大きいと思います。
そんな中で、だれかが声をかけてくれたらどうでしょう。「ホッ」としますよね。そのために、わたしたちの声かけはあるのです。わたしたちが声をおかけすることで、利用者は、きっと安心してくださるのだと思います。
2. 利用者も自分たちと同じと考える
利用者は、ご自宅で、わたしたちと同じように、ご家族、地域の中で生活されています。
利用者は、積極的な方、引っ込み思案な方、気の長い方、短気な方など、わたしたちと同じようにいろいろな性格をもっておられます。
利用者は、わたしたちと同じように、頭の中で、いろいろなことを考えて行動されています。
わたしたちとなんら変わりはないのです。同じように、ご自分でいろいろなことを考えて生活を送っておられるのです。わたしたちは、それをしっかりと意識することが大切です。
3. 「利用者の思いとは何か?」を考える
わたしたちは、ひとりひとり、物事に対する自分なりの見方を持っています。それを「価値観」といいますが、それは、ひとりひとり違います。
わたしたちは、利用者に接するとき、自分の価値観を通して利用者を見ることになりますが、それは、あくまで自分の価値観というフィルターを通した見方ですので、それが正しいとは限りません。
わたしたちの目の前におられる利用者の姿は、その方の生活の中の、ほんの一部でしかありません。他の時間、他の場所での利用者の様子を見たことがないのに、わたしたちは、「この人はこういう人」と決めつけてしまいがちです。わたしたちが見ている利用者がすべてではなく、人はいろいろな面をもっていることを認識することが必要です。
そのうえで利用者は、ご自分でいろいろなことを考えて行動されているということをしっかり意識すれば、利用者の思いに寄り添うことができるようになります。
4. 「馴染めないと思っているのはだれか?」を考える
わたしたちは、新しい利用者に、早く他の利用者と仲良くなっていただきたいと思いますが、それは、わたしたちの思いでしかありません。
これまでお話ししてきたように、利用者は、おひとりおひとり違い、ご自分の考えをもって行動されています。
利用者ご自身が何を思っておられるのかを知ることが大切です。「馴染みたい」と思っておられるのか、「ひとりでいたい」と思っておられるのか、「まだいいけど、もう少ししたら仲間に入りたい」と思っておられるのか、それぞれの思いがあるはずです。こちらの思いではなく、利用者の思いを知って、そのうえで、その方なりの馴染み方をしていただけるようにお手伝いすることが必要なのです。
介護のプロとして
介護という仕事は、介護技術を使ってする仕事です。しかし、それだけでは、介護のプロとしての仕事はできません。
介護という仕事は、利用者の生活のお手伝いをする仕事です。そこには、かならず利用者が存在します。その利用者と接するために使う技術が対人援助技術です。
それは、今までお話ししてきたことが基本になります。
1. 「自分ならどうなのか」と考える
2. 利用者も自分たちと同じと考える
3. 「利用者の思いとは何か?」を考える
4. 「馴染めないと思っているのはだれか?」を考える
ことを、技術として行うことで、利用者の思いに寄り添うことができるのです。
ライタープロフィール
potidon
特別養護老人ホーム、デイサービスで介護士、在宅介護支援センターで相談員、介護支援専門員
介護福祉士、社会福祉士、介護支援専門員、主任介護支援専門員資格取得