介護サービスの利用にあたり、始めに行うことは利用者が持つ課題を抽出する作業「アセスメント」です。適切なアセスメントは、利用者ごとに必要なサービスを検討するのに不可欠で、サービスを利用しながら再アセスメントを継続することにより、各段階に見合ったサービスを判断することができます。
現在この作業は、利用者の既往や現状を踏まえ、ケアマネジャーを始めとする介護職や医療職が連携して行っていますが、より効率的で効果的にサービスと結びつけるため、科学的根拠を示すシステム構築が始動されようとしています。今回はその礎となる、3層から構成される介護領域のデータベースについて、お話ししたいと思います。
データベースとは?
データベースとは、「一定の形式で整理された情報の集合体」を指し、これにより蓄積された膨大な量の情報から必要な情報を検索・獲得するのが容易になります。身近なデータベースとして「辞書」がそれにあたりますが、コンピュータにより管理された情報は、さらにその情報を即座に「共有」することも可能にしています。
また集められたデータベースは、活用されることで真の意味を発揮します。例えば、商品Aの販売実績をデータベース化することは、顧客管理とともに購買動向を把握することに繋がり、新たな商品の売り込みや販売時期の設定などにも役立ちます。
このように情報を基盤に新たなステップに進むというデータベースが、介護分野においても活躍することが期待されているのです。
介護領域のデータベース
厚労省は平成25年度より、介護保険給付費明細書(介護保険レセプト)と要介護認定情報などのデータベース化を開始し、平成30年度よりデータ提供を義務化する予定。このデータベースは「介護保険総合データベース(介護DB)」と呼ばれ、保険者ごとの介護給付費や要介護認定率などを把握する事ができ、地域における要介護者の状況を比較・分析するのに役立ちます。
そしてリハビリの方法や効果について集められたデータベース「VIST(monitoring & evaluation for rehabilitation service for long term care)」は、通所・訪問リハビリテーション事業所よりリハビリに関する計画書などを元に構築されていて、現時点では100ほどの事業所よりインターネット経由で収集されています。
上記2つのデータベースを補完する役割を担うのが、新たに構築が予定されている「CHASE(Care,Health Status & Events)」です。収集するデータの内容や収集経路は検討中ですが、介護保険サービスと利用者の心身状態との関係性を洗い出し、サービスの効果について科学的裏付けを打ち出すことが目的とされていて、平成32年度からの本格的な運用を目指しています。
まとめ
今年度の予算案には「CHASE」の開発費用として3.7億円が計上され、この金額からも「介護DB」と「VIST」と合わせた3つのデータベースによる「科学的介護」が、いかに期待されているのか分かります。高齢化が進む中、介護に係る費用の肥大はさらに深刻なものになっていくにも関わらず、介護職員の不足など人的要因により、社会保障の一端を担う介護保険サービスが十分に行き届いていないのも事実。社会保障費の抑制のためにも、介護を要さないよう「自立支援」に向けた取り組みは速度を増し、それに加えて人材不足を補える仕組みが要求されています。
介護分野に科学を導入する事により客観的に最善な介護策を見い出し、要介護者となる高齢者の数を抑え、かつマンパワーの代替となるストラクチャーを生み出す。帰するところ「科学的介護」には、超高齢社会に資する財源に歯止めをかけることが渇望されているのではないでしょうか。
ライタープロフィール
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介護福祉士、介護支援専門員。
小さな在宅系事業所で働いています。
介護に関わる全ての方々に、明るい未来を。