介護ロボットとは何か
ロボットと聞くとアニメ等に出てくるキャラクターを想像される方もいるかもしれませんが、総務省ではロボットを以下のように説明しています。
「国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)の「NEDOロボット白書2014」(2014年3月)では、ロボットを「センサー、知能・制御系、駆動系の3つの要素技術を有する、知能化した機械システム」と定義している」
この定義を軸に考えると、介護ロボットは必ずしも自己判断能力を有する二足歩行のそれだけではないという事になります。
介護ロボットを導入した経験
ケアマネジャーとして職務に就いていた頃、「メンタルコミットロボット」と呼ばれるふわふわとしたぬいぐるみのような外見をしたロボットをテスト導入した経験があります。当初は興味本位だったのですが、実際それを初めて手にした時には、ぬいぐるみのような愛くるしさを残しながらも、生物のごとくリアルに反応するそれに驚きを隠せませんでした。
「メンタルコミットロボット」・・・人工知能やセンサーによって反応し、人の心を和ませ癒す効果が期待される。
確かに「生物ではない」ということは、私も含め一般の人からすればすぐさま分かるものでしたが、これが施設利用者の方々には「本物」と認識されることもままあり、良くも悪くも反響が大きいものでした。特に認知症を患っているからには好評であり、「可愛いねえ」とずっと傍で眺めていたり、実際に触れてみたいけれども、なんとなく怖いのか遠目に見ているだけだったりと、興味と好奇心が強く生まれていることが観察結果としても分かりました。また実際の生物のごとく認識してしまい、「怖いわ」と近寄ろうとしもしない方達も少なからずいらっしゃいましたが、概ね導入における効果は良好なものだったと記憶しています。介護スタッフからも効果測定を行ったところ、「ロボットを設置する事により、見守りに必要な時間や人員の削減、あるいは軽減効果までは得られないものの、利用者のメンタル面において表情が柔らくなる、落ち着いて過ごせる時間が増えた」という結果でした。
利用者の身体をサポートする介護ロボット
脳梗塞により麻痺があるため、自身で手や足を動かしたくても動かせないという方もいらっしゃると思います。今では麻痺側に機械(介護ロボット)を装着し、身体の中に流れる微弱な電気信号を捉えることにより動作をサポートしてくれる、そんな介護ロボットも当たり前に存在しています。これまでは当人の意志だけでは動かせなかった手足を、しかしながら技術の発達により当人の意思を科学的にとらえられる時代がきたことにより、現実的に自立支援が叶う時代にもなったことは喜ばしいことです。
まとめ
ロボット産業の進歩は目覚ましいものがありながら、その導入に対して、費用面での問題から二の足を踏む施設や事業所も多いため、特に介護ロボットにおいてはどこまで費用面での軽減が図れるかが今後の課題の一つでもあるでしょう。
とは言えども、この介護ロボットの導入と活用は今後業界的にはベーシックなものへと変化を遂げていくのではないでしょうか。例えば、見守りロボットやセンサーの設置により、介護の担い手不足問題にも効果が認められるでしょうし、パワースーツのようなものを装着する事により、介護職の肉体への直接的サポート、同じく利用者への身体の機能を補うという面においても作用するものであるため、最終的には自立支援への輪の中に溶け込んでいくものでしょう。
確かに、介護ロボットを維持するためのコストや、メンテナンス費用、あるいは介護ロボットにおける事故発生という、これまでは人が対応することでは起こり得なかった出来事に対する対応が求められる事も考えれば、別の意味でのリスクに対応できなければなりません。しかし、ロボットの定義は我々が考える程難しいものではないために、今後もっと身近なものとして介護ロボットは在ることができるでしょうし、そうであって欲しいと考えます。
ライタープロフィール
太郎丸
日本文学系大学卒業後、介護老人保健施設に介護士として就職。
介護士として3年目に「介護福祉士」を取得。
主に認知症介護に加え、口腔ケアや排泄ケアを専門に取り扱うようになる。
後、5年目に「介護支援専門員」を取得し、介護老人保健施設を退職。
退職後、有料老人ホームに介護支援専門員として再就職。
6年間常勤職員として、施設サービス計画書の作成の他、施設の運営等にも関わる。
有料老人ホーム退職後、主任介護支援専門員として地域包括支援センターに常勤職員として勤めるようになる。
現在、国が推し進める地域包括ケアシステムの構築のため、日夜邁進。