介護業界では様々な職種の方が働いていますね。利用者と直接かかわる介護職員やヘルパー、介護支援専門員などがよく知られていますが、同じように介護業界では重要と言われている業務が「介護報酬請求業務」です。
今回はこの介護報酬請求業務を専門的に行う介護事務について、一般の事務職との違いや、資格取得の方法・メリットなどを詳しくご紹介します。
介護事務の仕事とは?
介護保険施設や介護サービス事業所に勤務する事務職員で、介護報酬請求業務を主に行います。通常の受付業務や勤怠管理などの一般的な事務も行いますが、介護報酬を請求する時期には、集中して取り組む点が特徴的です。
介護報酬請求業務はレセプト作成とも呼ばれ、月初めに前月のサービス利用分のうち保険者へ請求する8~9割分の報酬を保険者へ請求する仕事です。
介護事務職員は現場で働いている介護職員と同じぐらい、非常に重要な役割を担っています。介護報酬の計算はミスがあったり決められた期間に遅れてしまうと、事業所の経営自体にも影響するほどですので、責任重大とも言えます。
介護事務の仕事をするために必要なスキル
介護事務は介護福祉士のように国家資格ではなく、介護支援専門員のように業務独占資格でもありません。
ですから介護事務は全くの未経験でも始めることが可能です。
しかし実際には介護保険の専門的知識や請求業務の流れをあらかじめ理解できている方が優遇されます。また介護報酬請求業務はパソコンの専用ソフトを使用しますので、ある程度のパソコンスキルを身につけている必要もあります。
必要なスキルに関する3つのポイント
1. 未経験でも可能
2. 介護保険の専門的知識や請求業務の流れをあらかじめ理解できている方が優遇
3. ある程度のパソコンスキルは必要
介護事務の資格を取るメリット
就職に有利
資格を持っていなくても仕事を始められる介護事務ですが、実際に働き始めてから業務内容を一から覚えることは大変です。また、雇う側としても即戦力になる人材を求める傾向があり、資格取得者を優先して採用します。
年齢を気にせず働くことが出来る
介護職員は体力勝負と言われ、年齢を重ねるにつれ段々と身体的な負担がかかってきます。一方で、介護事務はデスクワークが中心になりますので40代、50代になっても働き続けることが出来ます。
働き口が幅広い
介護保険施設や介護サービス事業所はこれからもますます増え続けることが予想され、介護事務は安定した仕事と言えます。どの職場においても介護報酬請求業務は必須ですから、専門的知識を備えた有資格者は働き口の選択肢が幅広いと言えます。
介護保険制度の理解が高まり実務がしやすい
介護事務の資格を取得することで、これまで知らなかった制度の概要が理解できるようになります。資格を持たず介護事務の仕事を始められた方の中には、介護保険制度の理解が十分ではないこともあり、実際に働きながら資格を取得する方も多くいます。
介護事務の資格を取るには?
では、介護現場を裏から支える介護事務は、どのような資格を取得していれば良いでしょうか?
介護事務の資格は一つではなく、民間団体が認定している各資格が数多くあります。
ここで、介護事務の代表的な資格をご紹介します。
介護事務管理士(R)
技能認定振興協会(JSMA)が実施。
受験資格は特になく年に6回試験が実施されます。
試験内容は学科(マークシート形式で10問)と実技(介護給付費明細書の点検1枚、作成3枚)があります。
試験の合格率は50%です。
ケアクラーク(R)
一般財団法人 日本医療教育財団が試験を実施。
受験資格は特になく、年に6回実施されます。
試験内容は学科(50分で25問)と実技(60分でレセプト作成2問)があります。
合格率は60%前後で学科、実技ともに70%の得点が必要です。
介護報酬請求事務技能検定試験
日本医療事務協会が実施。
受験資格は、
・日本医療事務協会が認定する介護事務講座を修了した者
・受験申請のあった高校・専門学校・短期大学・大学等
試験内容は学科と実技試験で、資料の持ち込みが可能。
合格率は80%近くです。
ここで挙げた資格は、独学でも試験を受けることは可能ですが、それぞれ試験を実施する団体が開催している通信講座や通学講座で一定期間基本を学んだあとに試験を受けるケースが多いようです。
通学コース
民間団体が実施している資格取得スクールでは最短3日間から2ヶ月の受講期間があります。週2回通学するコースや、土日に集中して通学するコースなどあります。
費用は40,000円~70,000円前後です。
通信コース
通信コースは自宅で学習できるので、通学できるスクールが近くにない、子育てや仕事に追われて通学する時間を確保できない方に適しています。
受講期間は最短で1カ月、長くても4ヶ月で受講が修了できます。
費用は30,000円~70,000円前後になります。
まとめ
比較的短期間で資格が取得でき、すぐに実務に就くことが出来る介護事務は、とても人気の高い資格です。現在介護現場で働いている方でも、将来的なキャリアアップにも役立つことや、転職を考える機会にはデスクワークに切り替えることも可能になる資格です。
介護保険制度の概要や給付の流れも併せて習得できるので、資格取得することで得るメリットは大きいと言えます。
ライタープロフィール
結のそら
むすびのそら。
介護福祉士や介護支援専門員として約20年介護業界に携わる。
取得資格:社会福祉主事、介護福祉士、介護支援専門員、主任介護支援専門員、福祉住環境コーディネーター3級