介護施設で働いていると、毎日いろんなことがありますよね。利用者さんが予想もしなかった行動に出ると、ハラハラしてしまいます。私も利用者さんと接していると、「この人凄いな」と感心することがあります。利用者さんから教えてもらったり、出来そうにないことが実は出来たということであったりと、発見の日々です。そんな利用者さんの中でも、私が特に印象に残っているAさんについて、お伝えしていきます。
コロコロ変わるAさん
Aさんは小柄な女性です。喉にガンが出来て、話すことができません。職員を見つけると歩いてきて、頬をさすったり、後ろから抱きついたりします。かと思いきや、次の瞬間には職員を叩いたりします。
出会った当初は、あまりの豹変ぶりにビックリしてしまいました。しかし慣れてくると、「今は機嫌がいいな」「あんまり近づかない方がいいな」という気配が分かるようになってきました。
Aさんがいない
私が働いている介護施設は地域密着型の特養です。夜勤は3ユニットを2人で見守ることになります。当然、ケアの為にユニット間を行き来します。
ある日の夜勤中、他の利用者さんのケアに入る為、Aさんがいるユニット(以下Bユニット)を離れました。離れる前にAさんの部屋を巡視したのですが、Aさんは寝ているので安心してBユニットを離れました。
ケアを終えてBユニットに戻ってみると、Aさんの部屋のドアが開いていました。私はビックリして部屋の中を確認するも、Aさんはいませんでした。
闇夜に浮かぶ影
まず施設内を探すことにしました。隣のCユニットにもおらず、一番遠いDユニットを探そうと廊下に出ると、薄暗い廊下の中、人影が移動していました。足音もなかったので、オバケかと思ってしまいました。
思わず悲鳴を上げてしまった声にビックリしたのか、影が振り向きました。よくよく見てみると、Aさんでした。
後から話を聞くと、Aさんは夜トイレに行く為に起きることがあるとのことでした。元々小柄で足も小さいこと、靴を履いていなかったことから、足音が聞こえなかったのです。
その後無事にトイレに誘導し、また休んで頂きました。
ひと仕事な入浴介助
Aさんは元々お風呂が嫌いな人です。
なので入浴介助は職員二人で行います。お風呂場に誘導するまではいいのですが、いざ服を脱がせようとすると、抵抗するAさん。一人の職員がAさんを押さえて、もう一人の職員が服を脱がしていきます。洗体中も手足をバタバタさせ、職員のメガネが吹っ飛んだこともしばしば。
なので入浴介助の時はメガネを外すことが必須です。
終わった後、職員も疲れますが、Aさんもとても疲れていました。お風呂から上がると、水を一杯飲み、トテトテと部屋へ戻っていきました。
ユニットのお姫様
そんなAさんですが、寝顔がとても可愛いです。
ユニットのリビングにいても、気づいたら寝ていることがあります。ぬいぐるみを抱いて寝ているAさんは、まるで子どものようでした。
そんなAさんを、職員の間では「ユニットのお姫様」と呼んでいます。気分がコロコロ変わるけれど、その可愛さから許してしまうからとのことでした。
その話を聞いた後、Aさんをコッソリ写真撮影し、ビックリしたAさんに叩かれました。
まとめ
以上が、私が出会った印象的な利用者のAさんです。Aさんの気分次第で、ケアに入るのがスムーズだったり難しくなったりします。最初は戸惑いましたが、今は気分の変化を感じ取ることが出来、スムーズに介助することが出来る様になりました。
また、元々可愛い人は齢を重ねても可愛いのだということを実感しました。小柄でぬいぐるみを抱いている姿は、癒しになります。
これからも、ユニットのお姫様Aさんを介護していきたいと思います。
ライタープロフィール
miruto
プロフィール:リハビリ系の学校に通うも中退。ひきこもりを経て工場で働きながら通信制大学に通い社会福祉士になる。その後現場経験を培う為、特別養護老人ホームで介護員として働いている。
趣味は温泉巡り。