介護職として働いていく上で印象的な患者さんは沢山いらっしゃいます。
今回はその中でも特に印象的な患者さんのことをお話します。
病棟のアイドル
私が配属された病棟にはとても可愛らしい90歳代のおばあちゃんがいました。優しい顔の方で垂れた柔らかいほっぺたと福耳がチャームポイントのおばあちゃんでした。
その垂れたほっぺたと福耳は本当に柔らかくていつも「触っていいですか?」と聞いて触らせて貰って癒されていました。
その方は喋り方もゆったりしていて、若い頃はこう呼ばれてたんですか?とあだ名を言うと「あっはっ」と照れたように笑うのがとても印象的でついつい話しかけたくなってしまいました。
可愛らしい見た目とゆったりした喋り方で病棟の介護職だけではなく看護師やリハビリ科の人にもとても人気があり、その方の周りにはいつもスタッフがいて楽しそうな笑い声が耐えず病棟内もとても明るくいい雰囲気でした。
病棟アイドルのエピソード
病棟のアイドル的存在だったおばあちゃんは円背で仰向けに寝ることができずにいつも側臥位(ぎょうがい:横向きの体勢)でした。それ自体は珍しくはないのですが、ある日の朝いつものようにオムツ交換をしに部屋へ行き声をかけるとシーツがびしょびしょでした。
オムツから横漏れしたにしては頭の方までびしょびしょで何でだろうと悩みつつ着替え等の介助をしていると先輩介護職が「夜勤さんがバスタオル敷くの忘れてたからヨダレでびしょびしょね」と言うので初めてヨダレだと気づきました。
病棟のアイドルは唾液量がとても多く、寝る時にバスタオルを敷かないとシーツからパジャマまでびしょびしょになってしまうのです。
私の介護経験は短いですが、こんなにヨダレが凄い方はこの方だけでした。
アイドルが好きな物
私が居た病棟は食べ物の持ち込みは禁止ですが、病棟のアイドルはドクターに許可を貰い病院食以外で毎日食べているものがありました。
それは梅干しです。いつも来る息子さんが持ってきてくださる梅干しを毎日朝食の時に介護職が種を取り1粒だけ出していました。
その梅干しもご飯が来る前に渡してしまうとそのまま食べてしまうのでご飯が来るまでは出さずに置いておき、ご飯が来たらおかゆに乗せるようにしていました。
梅干しをおかゆの上に乗せるときにも広げながら乗せないと梅干しだけ食べてしまい、残りのご飯を食べなくなってしまうので注意していました。
ほかの人よりも塩分を多く摂っていたので、その分の水分を沢山摂って貰うよう意識していました。
まとめ
最初にも書いた通り私にとって印象的な患者さんは沢山いらっしゃいます。
ですがその中でも特に印象に残っていた病棟のアイドル的存在のおばあちゃんは、私が介護職になってすぐに出会った方でした。
元々お年寄りが好きだったのでどの患者さんも大好きでしたが、1番印象に残るエピソードが多かったです。私が入職して半年くらいで亡くなってしまいました。私がその方を大好きだったことを知っていた先輩が気を使って休みだった私にメールで教えてくれて、その事を聞いた時は家にいたので声を上げて泣いてしまいました。
介護職になって初めて患者さんの死を体験したということもありますが、それだけ大好きだったんだなと今は感じています。
それだけ大泣きするなんて感情移入しすぎているとは思いますが、少しの時間でも一緒に過ごすと自然と感情移入してしまいます。もちろん別れは辛いですが、患者さんにとっても私と話した時間が楽しい時間であったらいいなと思っていますし、私も患者さんと話す時間はとても楽しいです。
退屈な入院生活の中で少しでも笑ってもらえるように、色々な患者さんに話しかけに行っていました。
可愛らしいアイドル的存在のおばあちゃんの事は、もう何年も前のことなのにまだ昨日のことのように思い出せるくらい印象に残っています。
もちろんその家族である息子さんのこともよく覚えています。こまめに自分のお母さんに会いに来る素敵な息子さんでした。
他にも印象に残る患者さんがいますがそれはまた別の機会にお話します。
ライタープロフィール
ぶん
自宅で半身まひ、認知症に祖父を半年間介護。
高卒で介護士を目指し介護職員初任者研修取得。
病院で介護士として2年働き、現在は子育て中のため退職。