法改正にて
平成30年度介護報酬改定において、「訪問回数の多い利用者への対応」について次のように記されてます。
ア) 訪問回数の多いケアプランについては、利用者の自立支援・重度化防止や地域資源の有効活用等の観点から、市町村が確認し、必要に応じて是正を促していくことが適当であり、ケアマネージャーが、統計的に見て通常のケアプランよりかけ離れた回数(※)の訪問介護(生活援助中心型)を位置付ける場合には、市町村にケアプランを届け出ることとする。【省令改正】
(※)「全国平均利用回数+2標準偏差」を基準として平成30年4月に国が定め、6ヶ月の周知期間を設けて10月から施行する。
イ) 地域ケア会議の機能として、届け出られたケアプランの検証を位置付け、市町村は地域ケア会議の開催等により、届け出られたケアプランの検証を行うこととする。また市町村は、必要に応じ、ケアマネージャーに対し、利用者の自立支援・重度化防止や地域資源の有効活用等の観点から、サービス内容の是正を促す。【省令改正】
地域ケア会議の在り方とは
私が所属している地域包括支援センターにおいても、定期的に地域ケア会議を開催することで、当該事例から透けて見えてくる地域課題の解決や、個別ケースの積み重ねにより共通して見えてくる地域課題の解決を目指しているのですが、上記のようにケアプランの検証を一つの目的として行った例はいまだありません。
しかし、そもそもこのような役割を地域ケア会議が担うべきなのでしょうか。確かに地域ケア会議の深化は、地域包括ケアシステム強化、更には地域共生社会の実現においても必要不可欠なことであると考えます。とは言え、ケアプランの検証の場として機能させていくことは、はたして深化のために必要なことと言えるのでしょうか。そもそもケアプランの作成は、専門職であるケアマネージャーが各クライアントの個別性等を踏まえ、客観的かつ正確なアセスメントと、適正な評価を行いながら、PDCAサイクル(P=Plan/計画 → D=Do/実行 → C=Check/確認 → A=Act/改善)の中実施しているという前提の中成り立っているものなのです。確かに適切なケアマネジメントが行われているとは言い難いという例もあるかもしれませんが、しかしケアプラン検証を行うということは、そもそもケアマネージャーの実践力を懐疑的に見ている、ということに他ならないのです。
確かに、ケアプランの点検や検証は常になされなければなりません。それはケアマネジメントの質の向上の他にも、自己覚知を促したり、振り返りの意味においても非常に重要だからです。しかし、検証の場があくまで否定的かつ非難的であり、まるで審判を行うが如く、それだけを目的に機能するとすれば、それは悪戯にケアマネージャーからモチベーションを奪い去るだけとなってしまいます。無論、ケアプラン検証の中で是正すべきところはそうすべきですが、その役割機能をはたして地域ケア会議にまで持たせる必要があるのかは疑問を覚えるところです。
まとめ
そもそも、「地域包括ケアシステムは、保険者である市町村や都道府県が、地域の自主性や主体性に基づき、地域の特性に応じて作り上げていくことが必要」と厚生労働省は謳っています。ケアシステムの強化の一環である筈の地域ケア会議の深化の方向が、ここにきて単純に介護保険利用に対する抑止として向いているとすれば、それは本当に地域共生社会のあるべき姿なのでしょうか。
ケアマネージャーにはそもそも自らの質の向上に対する義務がありますし、また自らが所属する組織や、各機関がそれぞれフォローを入れていくことが基本である筈です。少し乱暴ではありますが、地域ケア会議におけるケアプラン検証等、本来のケア会議の意味でも、またケアマネージャーの自主性から見ても、「余計な横やりを入れられている」そんな気がしてなりません。
ですが、このような働きが行政より期待され、かつ求められてしまったのはケアマネージャーの存在がそれだけ大きいということでもあります。ケアマネージャー個人が動かす保険料の額に見合った働きをそれぞれが取ることができるようにならなければ、それもまた意味の無いこととなってしまうのです。
今まさにケアマネージャーの真価が問われている、ということかもしれません。
参考資料:第158回社会保障審議会介護給付費分科会資料, pp09, 2018.01.26