私は介護士も行い、相談員、ケアマネジャーなども行い、今まで関わってきた利用者は500人以上になるかと思います。その中でも印象的な利用者についてご紹介していきたいと思います。
頑なに一人で暮らしていたおばあちゃん
私がデイサービスの相談員として働いていた頃、ケアマネジャーからある利用者について相談を受けました。その方は80代の女性の方で、施設の隣のマンションに住んでいるおばあちゃんでした。ここではAさんと呼びます。Aさんの存在自体は私も知っていました。
Aさんは毎朝マンションの前のベンチに座っていたからです。
ケアマネジャーから事情を聴くと、
・Aさんは中度の認知症であり、
・家族は全て他界(子供がいなかった)し、一人で過ごしている、
・調理や掃除などが出来にくくなったAさんにケアマネジャーが1か月前に付くことになりました。
Aさんの状況を見るととても在宅で一人で生活することは困難だと思ったケアマネジャーは施設へ入居を勧めましたが、頑なにAさんは在宅で住むことを希望したのです。しかし、在宅で住んでいると火の不始末があったり、薬の飲み間違いがあったりなど、様々な問題があったので困ったケアマネジャーは私に相談をしてきたのです。
私が働いているデイサービスは特養併設型でしたので、まずはデイサービスに馴染んで、徐々に施設へ入居という形にしたいという相談でした。
私は施設へ入居するしないに関わらず、ほとんどの時間一人で過ごしているAさんのことが気になり、デイサービスを利用してみることをケアマネジャーに提案したのです。ケアマネジャーからは「Aさんはデイサービスにも行きたくないと言っているので、なんとか誘ってくれないか」と打診がありました。
どうやってデイサービスに来てもらうのか
私はベンチに座っているAさんに話しかけました。Aさんはにこにこ笑顔で話を聞いてくれました。自分がデイサービスの職員であること、ケアマネジャーから利用の依頼を受けたことなどを話し、一度デイサービスを利用してみることを打診してみました。しかしAさんからは「あんな人の多いところ嫌や」という返事が返ってきたのです。
次の日も次の日もAさんに話かけることにしました。その際はデイサービスに誘うということをせずに、まずは自分の顔を覚えてもらうこと専念したのです。
それが1週間もすれば「またあんたか」というように顔を覚えてもらったのです。私はデイサービスでイベントがある際「良かったら見に来るだけでもいいから来てもらえないかな」という提案をしてみたら、最初は嫌がっていたAさんでしたが「少しだけなら」ということで見に来てくれることになりました。Aさんはデイサービスは暗い場所というイメージがあったようですが、実際に見学をするとイメージと違ったようで「楽しいところやね」と言ってくれたのです。
最初の印象と変わった
Aさんは最初会ったときは不愛想な方でした。しかし、同年代の高齢者とお話をするAさんは非常に気さくであり、冗談を言ったりするなど最初の印象と随分違ったのです。ケアマネジャーもそれに驚いて「私の前じゃ怒ってばっかりだったの」といっていました。
結局Aさんは週に5回ほどデイサービスに通うことになり、そこで食事や服薬管理、入浴などもできるようになり、施設へ入所をしなくても十分生活をしてもらえるようになったのです。私は最初の関係作りから丁寧に関わりをして本当に良かったと感じています。
まとめ
Aさんのように「話せばわかってくれる」人は非常に多く、その人が分かってくれた瞬間は仕事として非常にやりがいのあるものです。
話すだけではなく、根気よく関わることも大切だということをAさんの事例を通して学びました。
ライタープロフィール
Kokko0320
介護福祉士、ケアマネジャー、社会福祉士を取得しています。
介護についての情報や私の経験談など、現在介護をしている方はもちろん、これから介護を目指している方にわかりやすくご紹介していきます。