今シーズンはワクチンの不足や高齢者福祉施設における集団感染のニュースなど、インフルエンザに関するニュースを目にする機会が特に多かったのではないでしょうか。高齢者にとってのインフルエンザをはじめとする感染症は、命を落としてしまう危険性もあるため対策は不可欠です。今回は、高齢者福祉施設における感染症対策について考えてみたいと思います。
相次ぐ高齢者福祉施設における集団感染
インフルエンザは11月ごろから発生し、2月ごろに流行のピークを迎える傾向にあります。皆さんも11月ごろにインフルエンザワクチンの予防接種を受けた方が多いのではないでしょうか。ピークの時期には、小中学校等では感染対策のため学級閉鎖を行ったり、施設や病院では面会等に制限が加わることは珍しくありません。
今シーズンも2月前後に高齢者福祉施設でインフルエンザの集団感染に関するニュースが報道されました。
インフルエンザは、咳やくしゃみなどによって飛び散ったウィルスが他の人に入り込むことで感染する飛沫感染、ウィルスが付いた物などに触れた手で自分の目や鼻、口に触れることで感染する接触感染により感染します。
特に発症から3日程度は感染力が高いので、周りの方にも感染してしまう恐れがあるのです。今回の事例でも発症から数日~1週間の間に感染が拡大していることが分かります。施設では、同じ居住空間で十数人が共同生活を送りますので、早期の感染症対策が不可欠となり、感染後は内外への感染防止策が講じられ、個室でのケア対応や外部からの面会制限などが行われます。
不特定多数が出入りする施設の場合には、ウィルスが施設の中に入らないようにすることが対策の基本となります。
職員の対応ポイントは?
では、高齢者福祉施設で働く職員として注意するポイントはどこでしょうか。インフルエンザ対策の観点から、職員は誰もがウィルスを施設内に運び込んでしまう側になる可能性があることをまず理解しなければいけません。私も介護職として働いていた時は毎年のように施設内感染症対策研修にてこのことを言われました。
もちろん、受診や外出イベント等で施設利用者が外に出る機会もありますが、圧倒的に職員の出入りの回数のほうが多いのは間違いありません。
また、様々な地域から施設に通うことが考えられますので、当該施設周辺ではそれほど流行していなくても、流行地域に住む職員がウィルスに感染したことに気付かず出勤してしまったということは十分に考えられます。高齢者福祉施設で働く職員としては、感染の経路とリスクを理解して常日頃から自身の体調管理や手洗い、マスクの着用、インフルエンザワクチンの予防接種を行うなどの対応を行うことが必要です。
また、施設内でインフルエンザが発生する可能性を常に考慮し、不特定多数が触れる場所の清掃、除菌を心がける必要があります。こうした対策については、施設内にマニュアルがあることがほとんどだと思いますので、当事者としてしっかり目を通しておきましょう。
私が対応していて難しいと思ったことが、生活する利用者さんの観察です。高齢者福祉施設で生活する利用者さんの中には、認知症で自分の部屋がどこかわからず他人の部屋で寝てしまう、不衛生な場所の区別がつかず触ってしまうといった行動をされる方もいらっしゃいます。自身が感染してしまう恐れや感染していた場合には他の利用者さんに感染させてしまう恐れがありリスクの高い状況と考えられます。
このような時には、常に利用者さんの状況に目を配り、お部屋へのご案内や手すりや床などの清潔を怠らないよう注意していました。
まとめ
免疫力の弱まった高齢者の場合、肺炎の併発する場合もあり、持病がある場合には命に係わる場合も少なくありません。利用者さんはもちろんですが、職員やその家族、利用者さんの家族も一丸となってインフルエンザについての理解、予防、対策に取り組んでいきましょう。
ライタープロフィール
kyota8414
介護職や地域の相談員として7年福祉業界に携わる。
取得資格:ホームヘルパー2級、認知症ケア指導管理士(初級)、社会福祉士