私は、現在介護業界で約20年働いています。この20年の中で、病院のケアワーカー(介護士)、特養の寮父、居宅ケアマネ、施設ケアマネ兼相談員を経験しました。この経歴の初期で私がこの業界で感じたこと、その延長線でどう介護感が育ち、変わっていったか?について、触れていきたいと思います。
最初の職場
一番最初にこの業界で勤めたのが、病院のケアワーカーでした。福祉の専門学校を卒業し、一番最初に働いた職場です。
ここで、介護の原点である食事介助、排泄介助、入浴介助方法を学びました。先輩ヘルパーの指導の元教わったのですが、丁寧な介護からは程遠く、時間内に職員のタイミングで利用者さんが職員のやりやすいように合わせる介護を虐げられていました。
「あっち向きなさいよ」「手をどかして」「足開かないとやりにくいでしょ」などと強い口調で従わさせる強要介護が横行されていました。それを見本に指導を受ける中、フロアーリーダーと呼ばれる常勤の介護福祉士の資格を持つ先輩がいました。この方は、周りに流されることなく丁寧な介護、話の傾聴、積極的な離床、レクの企画などをし、利用者さんの立場に立って相手に寄り添う介護をされていました。
我の強いパートのヘルパーさん8割、常勤の介護福祉士2割と数でいうと劣勢な状況ではありましたが、私もその先輩の弟子(?)として、職場の環境を良くする為に奮起しました。院内の改革をする上で、どうしても壁になったのが、年配ヘルパーさんの職員目線で従わせる強要介護の撲滅。最終的にこの病院で5年半働いたのですが、改革を推し進める上での強い心臓と相手を負かす話術を身に付けました。この境地に至るまで、精神的に追い込まれ、抗精神薬を服用した時期もありましたが、その修羅場も乗り越え、利用者(患者さん)さんが、安心して、人として尊厳の持てる病院にシフトチェンジ出来ました。
ただ「病院での最後の看取りを行うケア」というテーマではなく、もう少し病状の安定している高齢者の介護もしてみたいという思いから、特養の寮父へと転職を決意しました。
特養での寮父
特養での介護は、丁寧で拘束もなく、利用者思いの尊敬出来る介護でした。
おむつからトイレ誘導にアプローチし、尿意を取り戻し、おむつのサイズを大きいものから小さいものに変える。おむつ外しの取り組みをしていたのには脱帽しました。また、レクなどにも力を入れ、生きがいや日本の伝統的な文化を組み入れるなど、勉強になる経験を沢山積むことが出来ました。
その後ケアマネの資格を取り、居宅ケアマネになることとなりました。正直、居宅ケアマネがどんな仕事なのか?細かい業務内容は未経験で、知り合いにも居宅ケアマネが居なかった為、未知な世界に踏み入れる思いで勤めることを決意しました。当時、私も結婚したてで、現場での給料では大変な生活状況だったので、経済上やむを得ず転職した感はありました。
居宅ケアマネになって
居宅ケアマネは、病院や特養と違って、外に出て動き回る訪問型の業務で、慣れるまでは一つ一つの訪問全てが緊張の連続で、ハラハラしながら頑張っていました。
また介護保険のルールも多く、知らないとコンプライアンス違反になるケースもあったので、先輩に聞いたり、ネットで調べたり、市にお伺いを立てたりして一から十まで学ぶこととなりました。
そんな中、仕事を覚えていく内に居宅ケアマネ独特のやりがいが見えてきました。
サービスを使っていない困り果てた境地に立たされた状況下で初対面をし、希望を取り戻し、立て直す為のプランを作成。本人に合ったサービスを紹介し、入院になった時は、ベストな状態で在宅に戻れるように調整をする。最後亡くなった後も、家族から感謝の言葉を頂き、感謝され、社会貢献でき、頼りにされるやり甲斐のある仕事と思えるようになりました。
しかし、私に転機が訪れました。部署異動です。職場からの辞令で、やりがいを感じていたケアマネから変更し、施設ケアマネと相談員を行うこととなりました。
施設ケアマネと相談員に異動
施設のケアマネと相談員は、施設の中である意味中間管理職的役割が課せられていました。
また、苦情対策委員長にも抜擢され、施設の歪を解決するキーマンとして責任を負いながら働くこととなりました。
施設の入り口でもあり、亡くなった後の最後の手続きもするトータルサポート役に任命される形となりましたが、中々の重役で荷の重さに潰されそうになったこともありました。
とはいえ、勉強になった点も沢山ありました。
他事のケアマネと関わることで、良いケアマネがどんなものかを客観視することができるようになりました。また施設の歪を解決することで、解決力やリーダーシップを養うことが出来ました。会議の司会を任されることも多かった為、司会進行スキルやプレゼン力(上司への提案)も養うことが出来ました。
今は居宅ケアマネに
今は相談員として働いていた特養を退職し、また居宅ケアマネとして新たに働いています。様々なポジションを体験して来ましたが、自分に一番ピント来たのが居宅ケアマネだった為、もう一度 本巣に戻る事としました。
利用者思いで、療養上の不安を和らげる為の医療知識も身に付け、取引している在宅サービス業者との連携も密にし、日々悪戦苦闘して頑張っています。
今後も3年置きに改定される介護保険制度とお付き合いしながら、利用者が障害を背負っても安心して在宅で暮らせる生活作りを支援していきたいと考えております。
ライタープロフィール
モカ・マロン
介護業界で20年勤める
取得資格 社会福祉主事任用資格 介護福祉士 介護支援専門員