高齢者、特に要介護者になりますと尊厳が阻害されやすくなってしまい、阻害されてしまうと生きる気力が低下したり、自立にはほど遠い環境で生活をしていくことになります。
尊厳を守る方法として注目されている介護の考え方があります。それは「ユマニチュード」と呼ばれ、非常に多くの介護現場で取り入れられている方法となります。
ユマニチュードはどのようにして高齢者の尊厳を守っていくのでしょうか。
介護職から高齢者へ伝える方法
ユマニチュードは非常に複雑であり、習得には一定の期間が必要となっています。しかし、ユマニチュードの考え方としては非常にシンプルなものですので、考え方だけでも覚えておきましょう。
ポイントとしては、介護職の思いを高齢者に伝えやすくする手法です。つまり、介護職の考えていることがスムーズに高齢者に伝わり、安心して生活をしてもらえることが目的となります。
介護職が高齢者を大切にしたいという気持ちを、高齢者が大切にされていると受け取ることによって高齢者の尊厳が守られるのです。特に認知症の場合は、大切にされているという気持ちを持つことによって、状態が安定してきますし、認知症状が収まっていくことがあります。
技術は4つの柱で行う
それではユマニチュードは具体的にどのようなことをしていけばよいのでしょうか。ユマニチュードの基本は
1. 見る
2. 話す
3. 触れる
4. 立つ
という4つの柱を中心に考えていきます。
相手を見て目線を合わせて話をする、体に触れながら関わる、立つことを意識してもらって生きていることを実感してもらうなどが基本的な方法となります。
具体的に説明すると、例えば立つということは、高齢者に立ってもらうということです。寝たきりの状態になってしまいますと高齢者の空間としては横と上(天井)だけになってしまいます。立ってもらうことによって横と上だけの空間以外に、下の空間、前と後ろの空間が出来て、空間認知力が自然と高まるのです。それが脳に刺激を与えて認知症を和らげてくれます。
触れるということを挙げると、腕を持って支える場合は必ず下から包み込むように持ちます。また包み込む際は手の平から触り、次に指を使って支えていきます。
このように非常に細かいことを覚えていく必要がありますが、高齢者が大切にされていると思うためには必要な技術となっているのです。
「大切にする」を行動に移す
大切にしているという気持ちを行動にするということが、ユマニチュードを通すと実践することが出来ます。いくら大切にしている気持ちがあったとしても、それが行動に出ていないということは、大切にしている気持ちが相手に伝わりません。
ユマニチュードが注目されている理由としては、ユマニチュードを実践するだけで、相手は自分は大切にされていると思うということがあります。例えば、まだ新人の介護職などの場合は、行動指針がないと難しいのですが、ユマニチュードが行動指針となり迷わず行動が出来ます。
尊厳を守るためにはユマニチュードは画期的な行動指針であるといえます。
まとめ
介護施設に入っている高齢者はいわば、介護を受ける側ですのでどうしても立場上弱くなってしまいます。弱くなっているからこそ尊厳を阻害されやすいですし、それがエスカレートしてしまいますと虐待に繋がったり、死亡事故に繋がったりもします。
そうならないためには、技法が必要なのです。ユマニチュードは技法ですので、技術です。技術を覚えることによって、一定の介護方法を身に着けることが出来ます。
もし現在介護で上手くいかない、気持ちが乗らないという場合には是非ユマニチュードを行うことをお勧めします。
ライタープロフィール
Kokko0320
介護福祉士、ケアマネジャー、社会福祉士を取得しています。
介護についての情報や私の経験談など、現在介護をしている方はもちろん、これから介護を目指している方にわかりやすくご紹介していきます。