有料老人ホームを選ぶ際の注意点や、入居を考える前に気を付けたいこと等、様々なメディアでポイントとなるところが紹介されています。入居にかかる費用、施設の内外装や設備、立地条件、医療機関との連携、介護や食事、余暇活動といったサービスの質の高さ等々、人それぞれ当該施設に対し何を求め、同時に何を最も重要とするかにもよりますが、現実的に自身の人生を預けるにあたって、感動的な程、全てが完成された施設と出会うのは至極困難なことだと思います。無論、非の打ちどころの無い程、高水準のサービスを兼ね備えた施設もあるでしょうが、それはほんの一握りのものでしょう。しかし、それでも入居しなければならないやんごとなき事情を抱えた人もいるでしょうし、じっくりと品定めを行う程の時間もない人もいると思います。やはり、ある程度のラインで妥協することも大切にはなってくるのですが、大切なのは我慢すべきことと、妥協できないことをはっきりと区別をつけることです。
質の問題を考える
施設の内外装や設備、食事の在り方等、目に映るものは確認もしやすくある程度自身が求める水準のものと近いものを選ぶことはできるでしょうが、働くスタッフの人間性や介護力、加えてサービス提供者としての接遇や技術力の高さ等は一目見ただけで推し量る事は困難なことです。おそらく入居に際してほとんどの方が妥協できないポイントとして「職員の質」を意見として持ち上げられることと思います。
しかし目に見えるものでは無い以上、こればかりは入居した後にしか分からないところを多分に含んでいるため、ここでの問題は「職員の質」をはたしてどのように捉えていくかということになります。職員の質に疑問を呈する場合、その問題のほとんどは実は自分に対して特定の職員のみに働いており、施設で働くほとんどのスタッフには問題がないことも多く見られます。逆に施設内職員のほとんどに共通して何かしらの問題点があるとすれば、それはそもそもサービス事業所として適切な運営がなされているか怪しいものですので、然るべき相談機関や行政機関に話を通すべきでしょう。話を戻すと、ほとんどの場合特定の職員が問題のキーとなっているために、施設管理者等に伝え職員教育を行ってもらい、改善を求めるというのが基本的なこととなってきます。
ですが、はたしてそれだけで問題は解決するのでしょうか?
起こり得る問題
結論から言えば、特定の職員の質の問題を一つ解決したところで、満足いく結果に達することはあまり無いと言えます。結局、それなりの数の職員が働いていれば、中にはなんとなくそりの合わない職員も一人や二人当然いるでしょうし、何かがきっかけとなり問題要素が発生するということも当然あるでしょう。そのような特定の職員に対する問題は何に端を発しているのか、入居している人からしてみれば、到底考えが及ぶことではありませんし、そこまで思考を巡らせるのはいささか違う気がします。とすれば、ある程度このような問題は当然起こるべきものとして考えていく必要があるのです。
まとめ
今後、高齢者人口の増加に対し民間企業が運営する有料老人ホームに対する役割、期待感はますます高まってくることでしょう。ところが、担い手である介護者の不足が漫然と続く以上、ある一定数の自分とは合わない職員が施設運営、もう少し言えば介護の担い手の一員であるというのもまた事実なのです。自分と合わない職員はどこにでもいるものとして捉え、その上で改善を求めていくのか、我慢をするのか、人それぞれ選択の余地はあるとしても、「自らを自衛する」ということは同時に入居者に求められていくことだと思います。それは心身であり、財産でも同様のこととなります。然るべき窓口への相談方法を知っておく。自室に貴重品は置かない。自衛のための手段を認識しておく必要があるのです。
「お金を払ったからこそ、何もかもが満たされ安全で快適な空間を手に入れたと言うことは決して無い」
そんな風にもこれからは考えていく必要があるのではないでしょうか。
ライタープロフィール
太郎丸
日本文学系大学卒業後、介護老人保健施設に介護士として就職。
介護士として3年目に「介護福祉士」を取得。
主に認知症介護に加え、口腔ケアや排泄ケアを専門に取り扱うようになる。
後、5年目に「介護支援専門員」を取得し、介護老人保健施設を退職。
退職後、有料老人ホームに介護支援専門員として再就職。
6年間常勤職員として、施設サービス計画書の作成の他、施設の運営等にも関わる。
有料老人ホーム退職後、主任介護支援専門員として地域包括支援センターに常勤職員として勤めるようになる。
現在、国が推し進める地域包括ケアシステムの構築のため、日夜邁進。