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特養は先行予約できるのか?「ベッド買い」とは?

2018年2月13日 14:48

介護業界のこれから・最新情報

現在、「特別養護老人ホーム(特養)」「介護老人保健施設(老健)」「介護療養型医療施設(2017年度末に廃止予定)」を合わせて、介護保険三大施設と呼ばれることがあります。今回はその1つである「特養」の入所に関して、問題視されている先行予約「ベッド買い」について言及したいと思います。

特養とは

まず特養についてご説明しておきましょう。先にも述べた通り、特養とは介護保険施設の1つで、正式には「介護老人福祉施設」と言い、社会福祉法人や自治体により運営されています。加齢に伴い身体機能の低下や認知症の進行により、在宅での生活が困難になった高齢者が入居できる公的な施設です。要介護3以上で申し込みが可能で、全利用者の97%以上が何らかの認知症を患っていて、60%以上が寝たきりであると言われています。リハビリを終え在宅生活を再開させる事を目的としている老健(要介護1以上)に対し、特養はより介護を必要としている高齢者を対象としているため、終の棲家として亡くなるまで居ることができます。

特養は介護保険施設のため、有料老人ホームのような手厚いサービスは期待できませんが、月々の利用料金は8~12万円程度(介護度や所得による)と安く、入所一時金などもありません。また公的機関という性質にも後押しされ、生活保護を受けながら入所することも可能です。

居住地と介護保険施設

介護保険施設とは公的施設であるため、その入所に関わる順番には公平性が要されます。また、在宅生活が困難な高齢者に限り利用する権利が与えられている介護保険サービスで、単に申込んだ順番通りに入所できるものではありません。利用者の状態に加え家庭環境なども勘案され、緊急性が高いと判断された利用者から優先的に入所できることとなっています。

介護保険制度では、居住している市町村の被保険者となるため、原則として居住地の施設を利用することとなっています。しかし、施設が多い市町村に住民票を移し入所する高齢者が増えると、その市町村の財政負担は肥大してしまいます。そのような事態を避けるために講じられた例外が「住所地特例」です。
「住所地特例」とは、他市町村の施設に入所する場合に、施設が所在する市町村の被保険者となるのではなく、元の住所地の被保険者のまま利用するという制度です。これには施設の多少に係る市町村の負担の偏りを是正し、安定的に施設サービスを供給するという目的があります。

特養の先行予約「ベッド買い」

先日朝日新聞が入手した内部文書により、自治体が他市の特養の入所枠を確保する「ベッド買い」なる協定が結ばれていることが明らかになりました。その内容を以下の通りまとめてみます。

・2011年7月、東京都調布市は東村山市の特養に、15床の確保を依頼。もともと25床を確保する協定を結んでいたが、建物改築に伴い、「その協定は解除される」と特養から通告されたのが発端。
・調布市は「1床50万円」を提示したものの、特養は「協議にならない価格」と却下。
・1年後、15床を2,000万(1床130万円ほど)で確保する協定を締結。これにより、その15床には調布市民が優先的に利用できることとなり、もし何らかの理由で利用できなくなった場合、特養は調布市に費用の返金をする。

調布市はベッド買いに対し、「厚生労働省より厳密な見識が示されていないので違法性はない」と判断しているようです。また今回の取材で、東京都内では8割以上の区市において、「ベッド買い」が行われていることが分かり、その総数は3,000床以上にも達します。多くの協定は介護保険制度(2000年)より以前に結ばれていて、現在もその効果は持続しています。

空きがあるのに入所できない

特養に係る給付費は、全介護保険サービスの中で最も高く、1,500億円/月ほどに上ります。特養の運営による財政の逼迫は深刻で、特に都心部では地価が高く、よって建設用地を確保するのも困難であると言えるでしょう。
厚生労働省は、全国の特養に入所している高齢者が約57万人であるのに対し、待機者が36万人ほどであると発表(2017年)しました。待機者は特に都心部に集中していて、東京都は最も待機人数が多く、約2万5,000人が入所を待っています。

一方、全国の特養には約1/4に空きがあるという調査報告もあります。1/4=19万床が空いていることになり、待機者の半数以上が入所できる空きがあるのです。住み慣れた土地の施設に入所したいのであれば、人口が多い首都圏の特養に申込みが殺到するのは予想できますが、前述の通り「住所地特例」が適用となるのに、なぜここまで需要と供給の矛盾が生じているのでしょうか。

その原因はいくつか考えられますが、最大の問題は介護職員の不足です。高齢者の増加に伴い特養を含めた施設が乱立されました。それにより十分とは言えないまでも、一定数の床数が確保されたのです。このようにハード面が充実したにも関わらず、そこで業務を行う人材の育成がお座なりになり、結果空きがあるのに受け入れられないという奇妙な状況に陥っているのです。

まとめ

介護保険サービスは所得や地域に関わらず、平等に利用できる公的サービスと位置づけられていますが、所得や居住地により納める税金には差があります。したがって自治体間にも格差が生じ、金銭を以って合意を得る「ビジネス」としての取引に至っているのです。取引とは買う側と売る側があって成立します。今回は調布市と特養がそれにあたりますが、なぜ調布市はベッドを買い、またなぜ特養はベッドを売らなければならなかったのでしょうか。規制により「ベッド買い」の撲滅のみに焦点を絞るのではなく、恒常的に特養が運営されるための対策を期待したいと思います。

ライタープロフィール

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介護福祉士、介護支援専門員。
小さな在宅系事業所で働いています。
介護に関わる全ての方々に、明るい未来を。

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