介護保険を利用している人のほとんどが体に何らかの疾患を抱えており、病院に通われています。
一人での通院が難しくなったり、家族の方が連れて行けないときに通院介助を希望される利用者さんは少なくありません。
ではそもそも通院介助とはどういったサービスなのでしょうか?
通院介助は身体介護で行うのが基本
通院介助を行うのは訪問介護事業所のヘルパーです。実は訪問介護には「生活援助」「身体介護」のほかに「通院等乗降介助」という単位があるのですが、実際のところこのサービスを提供している事業所は非常に少なく、一般的な通院介助は「身体介護」で行います。
訪問介護の原則は自宅で介護をすることであり、外出して行う通院介助はイレギュラーなサービスとして考えられています。
要するに介護保険で通院介助を行うことはもともと想定されておらず、実際に行うにあたってはたくさんの決めことを守らなくてはいけません。
通院介助の流れや禁止されていること
通院介助の一般的な流れは、まずは利用者の家に訪問し、サービス開始です。
病院へ向かう
病院に行くにもいろいろな方法がありますよね?一緒に歩いていく、タクシーに乗っていく、電車やバスの公共交通機関を利用する、車イスの利用者を押していく、などが考えられるかと思います。
原則として家族が運転する車やヘルパーが車を運転して連れて行く、というのは禁止されています(この「ヘルパーが車を運転して」というのが、前述した「通院等乗降介助」にあたります)。
そしてこの移動手段のなかで、乗り物に乗っていて介助が発生していない時間は介護保険では算定できません。これを中抜き部分といいます。
病院到着
さて、病院に到着です。介護保険上、ここでヘルパーを診察券を出すところまでして、そこからは病院スタッフに利用者を任せ、帰りに迎えに来ることとなっています。
つまりこれを病院にいる間は医療保険の範疇なので、介護保険では算定できません、ということなんです。
しかしながらそうも行かない病院が多いので、そういった場合はケアプランにのっとり、院内での介助もヘルパーが行います。例えば診察室や検査室までの移動、トイレ介助などは身体介護で算定します。
しかしながらただ座って待っている時間や診察の時間、歯医者などでの治療の間は介護保険が算定できない中抜き部分となります。
診察後
さて無事に診察が終わり、自宅に帰ることになりますが、病院では処方箋が発行されることがありますよね?
そういった場合は薬局によってお薬をもらって帰るか(これもお薬ができるまでの待ち時間は中抜きです)、いったん帰ってまたお薬をもらいに行くかになると思います。
でもここで、せっかく外に出たからちょっと買い物して帰ろうかとか、銀行によってもらおうかというのはダメなんです。
通院介助は通院介助のみ。帰りにどこかに寄ることは禁止されています。寄ってもいいのは薬局だけなんです。
まとめ
以上のように、通院介助はいろいろな決まりごとがある上に、ヘルパーは拘束されているのに介護保険で算定できない時間である中抜き部分をどうするか、というのを決めておかなくてはいけません。
どんなに小さな病院でも少なからず待ち時間は発生します。多くの訪問介護事業所ではその中抜き部分を自費として利用者に請求し、その分をヘルパーに支払うのですが、なかにはヘルパーが本当にただのサービスで付き添う事業所もあります。
さらには身体介護として行うサービスですので、原則として要支援の方の通院介助はできないとする事業所がほとんどです(プラン上、理にかなえば受けてくれる事業所もあります)。
自費なんか払えない、要支援だけど病院に一人で行けないし家族も付き添えないという通院難民が出ている現状を、国にもわかってもらい、何らかの対策も練ってほしいと切に願います。
ライタープロフィール
ふうこん
老健、特養、デイ、ヘルパーを経て現在は居宅のケアマネをしています。
資格:ヘルパー2級、介護福祉士、認知症実践者研修、全身性ガイドヘルパー、介護支援専門員