平成24年からは一定の研修を修了した介護職員は医療行為とされている「痰の吸引や経管栄養」ができるようになったことは皆さんよくご存じですね?
受験資格の一つでもある「実務者研修」では、医療的ケアもカリキュラムに含まれていますので、馴染みがあるかもしれませんね。
今回は、この医療的ケアについての出題をピックアップして解説していきます。
喀痰吸引等を規定した法律
介護福祉士の業であって、医師の指示のもとに行われる喀痰吸引等を規定した法律として、正しいものを1つ選びなさい。
1. 社会福祉士及び介護福祉士法
2. 社会福祉法
3. 介護保険法
4. 医師法
5. 保健師助産師看護師法
正答
1
解説
この問題は医療的ケアの最重要ポイント「喀痰吸引・経管栄養等について」問われています。
手技的な部分ではなく制度に関する出題ですので、「法律の事なんてはっきり覚えていない!」と戸惑うかもしれません。
でも選択肢をよく見るとそれぞれの法律が何について定めているのかは何となくでもわかりますね。問題文中に「医師の指示のもとに」とあるので、慌てて選択肢4を選ばないようにしましょう。
ポイント
介護福祉士とかかわりのある法律は、それぞれ「何について定めているのか?」など基本的な部分は押さえておきましょう。
社会福祉及び介護福祉士法
国家資格である社会福祉士や介護福祉士の資格・業務・義務などについて定めている
社会福祉法
社会福祉の目的や理念、原則について定められていて、各社会福祉に関連する福祉サービスの基本的事項も規定されている。
介護保険法
介護保険制度における要介護認定や介護サービスの各基準、給付や保険料などを定めている。
障害者総合支援法(旧・障害者自立支援法)
障害者・障害児に対して総合的な支援を行う。基本理念やサービスの基準などが定められている。
痰の吸引についての問題
Kさん(88歳、男性)は、介護老人福祉施設に入所中である。呼吸困難はない。ある日、Kさんがベッドに臥床しているときに、痰が口腔内にたまってきたので、介護福祉士は医師の指示通りに痰の吸引を行うことにした。
このときのKさんの姿勢として、最も適切なものを1つ選びなさい。
1. 頭部を肺よりも低くした姿勢
2. 仰臥位で顎を引いた姿勢
3. 腹臥位で頭部を横にした姿勢
4. ベッドに腰かけた姿勢
5. 上半身を10~30度挙上した姿勢
正答
5
解説
引き続き痰の吸引についての問題ですね。吸引を実施する際の対象者側の姿勢について問われています。
事例問題は文章が長いので、ポイントを読み間違えるとひっかけにつまづいてしまいますので注意しましょう。
ここでは「ベッドに臥床している」「痰が口腔内にたまってきた」の2つがポイントになり対象者がどのような状態なのかを読み取ります。
選択肢2と4で悩むかもしれませんが、選択肢2の姿勢は気道の確保が難しくなります。自力で痰を喀出できるなら選択肢4の姿勢でもよいのですが吸引による喀痰なので、どちらも正しい答えではないですね。
ポイント
喀痰吸引は、自分で痰を出すための力が弱い状態にある方を対象としています。普段私たちは「ごっくん」と唾をのむことや喉がイガイガするときに「ゴホン」と咳をすることも無意識にできていますが、高齢の方や障害を持っている方にはその行為が難しい場合があります。この点を念頭に置いて、吸引を行う際の姿勢についてイメージしましょう。
まとめ
これまでは医師や看護師でしか行うことができなかった「喀痰吸引や経管栄養等」ですが、これからは介護福祉士の資格を取得することでこれらの医療行為も行えるようになります。
筆記試験でも「医療的ケア」の問題が追加されたことは、介護福祉士には、より専門的な知識と技術が必要なうえ、医師や看護師との情報共有、報告・相談などコミュニケーション力をつけることも求められているといえるでしょう。
ライタープロフィール
結のそら
むすびのそら。
介護福祉士や介護支援専門員として約20年介護業界に携わる。
取得資格:社会福祉主事、介護福祉士、介護支援専門員、主任介護支援専門員、福祉住環境コーディネーター3級