居宅介護支援事業所のケアマネとして、在宅で暮らす方々の相談に乗ってもう8年になります。
頻繁に変化する介護保険に四苦八苦しつつも、それなりの経験を積んできたつもりですが、利用者の要望と介護保険の穴にはさまれて苦労することも多いです。
その際たるものが「通院介助」。
これに頭を抱えるケアマネは多いはず。何がそんなに大変なのか、説明したいと思います。
要望は多いが事業所が嫌がる「通院介助」
介護保険を利用している方は大なり小なり支援が必要ですから、通院している方がほとんどです。通院先が小さなクリニックであったり大学病院であったりと様々ですが、定期的に通う必要があるわけです。
しかしながら、自分ひとりで通院できる方はいいのですが、もちろんそうはいかない人も多いです。そして、通院に家族が付き添えるともかぎらない。
そこでですね、「病院にヘルパーさんに連れて行ってもらいたいんです」という要望が出るんですが、これが今の制度上なかなか一筋縄では行かないのです。
まず、病院までの道中は身体介護で算定できます。できますが、もし公共交通機関を使ったりタクシーに乗ったりして、その間は介護が発生しないとすると、ここを介護保険で算定することはできません。
そして病院で座って待っている時間も算定できません。
ですので、例えば10分歩いてバス停に行き、20分バスに乗る、病院に着いて1時間待って診察を受け、会計を20分待って同じルートで帰った場合、病院の中で多少の介護が発生しても算定できるのは身体1(30分)。ヘルパーの拘束時間は約2時間半です。
介護保険上の厳密な考え方では、病院の中のことは医療保険の範疇なので病院の職員が行うべきだ、となっています。ですので、診察券を入れるところまで介助を行い、あとは病院に任せましょう、ということです。
しかしながらもちろんそうはいきませんので、病院の中での移動やトイレ介助は介護保険でなんとか算定できますが、座って待っているだけ、はどうしようもないのです。
拘束時間が長いのに算定できない、そうなれば通院介助を敬遠する事業所が増えるのも当たり前ですよね。
では通院介助が必要な人はどうしているのか
それでもやはり病院には行かなくてはなりません。往診はほぼ内科しかないですし、大きな病院に通う必要のある人はたくさんいます。
まず最近増えてきているのが、待ち時間等の算定できないヘルパーの拘束時間を「自費サービス」として支払う方法です。
ほとんどの事業所がこの中抜き部分の自費に関しては「ヘルパーの時給保障」の意味合いで値段設定していますので、だいたい時給程度に設定されているところが多いです。
となると一時間で1500円前後が相場となり、待ち時間がかさめば負担額も大きくなりますが、一番双方にとっても法律的にもきれいな形での利用方法ではないでしょうか。
しかしながらそんなお金は払えないという人も少なくないのが現状です。それでも病院には行かなくてはならない。
中抜き部分を自費請求しないでヘルパーさんに泣いてもらう事業所もなくはないのですが、やはりそれもおかしな話ですし、当たり前ですが長い待ち時間は嫌がられます。
そこで結局どうにもならなくなり、ケアマネが通院に付き添うことになることも少なくありません。
本来の仕事ではないのですが、他にどうしようもないというか、なんなら病院から直接「ケアマネが連れてきて」といわれることもあるのです。
まとめ
現行の介護保険において、この通院介助は本当に穴というか、頭を悩ませることが多いです。通院介助だけなら受けませんという事業所も多いですし、とはいえ病院には行かないといけないし…。
本当にわずかな単位でもいいので、中抜き部分を算定できるようにしてほしいと切に願います。
病院に行けないから、自費なんか出せないから、もう通院しない、となってしまっている人たちがいる現実を知ってほしいなと思います。
ライタープロフィール
ふうこん
老健、特養、デイ、ヘルパーを経て現在は居宅のケアマネをしています。
資格:ヘルパー2級、介護福祉士、認知症実践者研修、全身性ガイド