介護は人と人が接する仕事ですので、トラブルはつきものであり利用者とのトラブルは最も多いトラブルとされています。上手く仕事をしていく為には利用者との関係をスムーズにする必要があり、トラブルなどがありますと仕事をしていくことが難しくなりますし、場合によっては虐待などに繋がる可能性がありますので注意していきましょう。
ここではトラブルの防止方法ではなく、トラブルが起こった際の対処方法などについて経験談を元にご紹介していきます。
お風呂に長時間入りたい利用者への対応
私が特養で仕事をしていた時のことですが、80代女性のAさんは自宅にいるときからお風呂が大好きであり、長い時には数時間お風呂に入ることがありました。施設では出来るだけその人の思いを叶えるために対応をしていくことが通常ですが、Aさんの要望を聞いてしまいますと他の利用者に迷惑をかけてしまうことや、職員の人数が足りなくなってしまうことなどの理由があり、断っていました。
するとAさんは
「私は自分ひとりで入れるから勝手にお風呂を使わしてもらいます、管理費を支払っているのだからこれは私の権利です!」と勝手にお風呂を使ってしまう事態になりました。
Aさんは確かにしっかりとしており一人でお風呂に入ることはできますが、施設側としては一人で入浴をして万が一事故などが起きたら困るので、一人で入浴してもらうことは駄目だったのです。入るなら職員が付き添う必要がありますが、現時点での職員体制では入ることはできません。しかし、Aさんにそれを説明しても納得されることなく、一人で入ろうとしたのでお風呂場のカギを締める対策をするしかありませんでした。医師からも長時間の入浴は体に負担がかかるように説明をしましたがまるで聞く耳を持たなかったのです。
なぜそこまでしてお風呂にこだわるのか気になった私はAさんと散歩をしながら色々話を聞くことにしました。するとAさんは自分から話しをしてくれました。
「私は手足がとっても冷えるの、冷えたら痛いし、何もしたくなくなる。だからお風呂に入っている間は手足が温まるから痛みがなくなって、唯一私が安心できる時間なの。」と言ってきたのです。
私は施設長に話をして、Aさんに定期的に足湯と手浴をしてもらうことを提案し実施をしました。するとAさんは「わざわざお風呂に入らなくても手足を温めるだけでこんなに気持ちいいなんて知らなかった、本当にありがとう」とそれ以上お風呂に入りたいという訴えを言うことはなくなりました。
本当の訴えを聞けているのか
「私は介護の仕事をする際に気を付けていることは、利用者の本当の訴えを聞けているのか、把握できているのかということです。Aさんはお風呂に入りたいという訴えをするばかりであり、なぜお風呂に入りたいと言っているのか、何に困って入りたいと言っているのかと最初は考えることが出来なかったのです。
二人きりで話をすることによって本当の訴えを聞くことが出来、その対策をすることもできました。利用者の行動に翻弄されるのではなく、きちんと話を聞いてその人の本当の気持ちを知ることが大切だといえます。
まとめ
利用者とのトラブルはどうしてあげることもできないようないことが多く、訴えがあったとしても真剣に向き合うことがなかなかできません。「また言っている」と思わずに、何を本当に困っているのかなど、解決の糸口を見つけていくことが大切になります。
特に認知症の方の場合は、こちらがなかなか理解できにくいような訴えをすることがありますので、相手の立場に立って、相手の反応を見てしっかりと介護することが、本当の介護といえるのではないでしょうか。
ライタープロフィール
Kokko0320
介護福祉士、ケアマネジャー、社会福祉士を取得しています。
介護についての情報や私の経験談など、現在介護をしている方はもちろん、これから介護を目指している方にわかりやすくご紹介していきます。