厚労省は3年の経過期間を設けながらも、平成21年度より
居宅介護支援事業所の管理者を主任ケアマネージャーに限定するという方針を発表しました。
この背景には主任ケアマネージャーへの期待感と共に、ケアマネージャーの質の向上が狙いとしてあるようですが、一方でこの方針には懐疑的な見方もあるようです。確かに、主任ケアマネージャーの取得には指定の研修の受講を条件とはしていますが、現在それ以上に特別な条件等を要するものではありません。つまりは当人の能力や資質に関係なく、研修を受けることで主任ケアマネージャーになることができるため、主任ケアマネージャーが管理者に就くことが、イコール資の向上に成り得ないというわけなのです。
この意見は非常に現実的であり、的を得ていると言えます。資格は確かに目に見えて分かりやすい一つの指標ではありますが、当人の資質や能力までは見えてきません。しかし、現実的に管理者として優れた資質と能力をもった人物を探し出し、居宅介護支援事業所の管理者に就かせるのはそれこそ現実的ではないでしょう。
ケアマネージャーの質の向上を目指す必要性
否定的な見方をすればきりがありません。しかし、現実的に打ち出された方針に対して、今後我々はどのように働きかけを行うべきなのか考えていく必要があります。やはり現在問題となっている膨れ上がる介護給付費の問題の背景には、給付管理を行うケアマネージャーの存在があります。当然ながら支出、つまりは介護給付費をできる限り抑えたい国としては、ケアマネージャーに対して適切なケアマネジメントを行えるように、つまりは資の向上を求めています。
では資質の向上はどのようにして果たされるのでしょうか。そもそも介護保険法第69条の34第3項にもあるように、ケアマネージャーには資質向上努力義務が求められており、ケアマネージャー各人にはその役割に就いた瞬間より、この義務が発生するということです。しかし、多くのケアマネージャーは日々の煩雑な業務に追われ自己研鑽が果たされない、あるいはそのようにしたくとも、自己研鑽にかかる費用負担の問題もあるのが現実です。勿論、そのような中でも努力し自己研鑽に励まれている方も数多くいることもまた事実ですが、しかし資質向上がここまで盛んに叫ばれ、現実的に管理に主任ケアマネージャーをつけることが定められたことは、裏を返せばやはり質の向上は果たされていないのです。
まとめ
自己研鑽はある意味生涯通じる自己投資とも言えますが、では一体毎月どの程度まで自己負担に回せるかと言えば、各々の生活もあるのですから一様にはいかないでしょう。ケアマネージャーのみならず介護の社会的地位の向上が果たされ、賃金的にも上がってこない限りこのように自己研鑽のため余裕をもって自身に投資するというのは、なかなか難しいのではないでしょうか。そこで、なるべく事業所内においても十分なケアマネージャーへの育成と資質向上が果たされるように、彼らへのスーパーバイズも役割の一つとしてある主任ケアマネージャーが事業所の管理者として配置が義務付けられたとすれば意味のあることだと言えます。
主任ケアマネージャーが配置されることによって、現在よりも少なからずスーパービジョンの機能が各事業所に浸透し機能するきっかけにはなるでしょう。事実、29年度の主任介護支援専門員研修より、その研修内容にも変化が生じています。内容として、スーパービジョンにもより重きを置かれ、実践的な演習等に加え、一回毎の研修の度に評価も行われるようにもなったのです。また更新研修においても、スーパーバイズの実践とその結果の提出が求められるようになっており、時代背景を色濃く反映した主任ケアマネージャーへの責任の重さが如実に現れていると言えます。
ライタープロフィール
太郎丸
日本文学系大学卒業後、介護老人保健施設に介護士として就職。
介護士として3年目に「介護福祉士」を取得。
主に認知症介護に加え、口腔ケアや排泄ケアを専門に取り扱うようになる。
後、5年目に「介護支援専門員」を取得し、介護老人保健施設を退職。
退職後、有料老人ホームに介護支援専門員として再就職。
6年間常勤職員として、施設サービス計画書の作成の他、施設の運営等にも関わる。
有料老人ホーム退職後、主任介護支援専門員として地域包括支援センターに常勤職員として勤めるようになる。
現在、国が推し進める地域包括ケアシステムの構築のため、日夜邁進。