今回は試験科目のうち「発達と老化の理解」の分野から2問題を取り上げて詳しく解説していきます。
エリクソンの発達段階説
エリクソンが唱える発達段階説で、青年期における発達課題として正しいものはどれか。一つ選びなさい。
1. 生殖性
2. 信頼感
3. 同一性
4. 自発性
5. 親密性
正答
3. 同一性
解説
まず、エリクソンが唱える発達段階説では8つの段階があり、それぞれの時期ごとに心理的課題が設けられています。この問題で問われている「青年期」とは、13~22歳までの年齢をいいますが、この段階では「自分がいったい何者なのか?」を考え始める時期だとしています。
1.× 生殖性をはぐくむ時期は35歳~60歳ごろまでの成人期であり、青年期の課題ではない。
2.× 信頼感は乳児期に授乳などの母親からの愛情を通して獲得される。
3.〇 アイデンティティとも呼ばれる「自我同一性」は青年期に起きるとされる。
4.× 自発性はエリクソンの発達課題にはありません。
5.× 親密性は前成人期の発達課題です。23~34歳ごろの前成人期は社会に出ていく時期となり、他者と親密な関係を持てるようになります。
ポイント
本試験で緊張していると、このような専門用語の意味が問われる問題は「どっちがどっちだったっけ?」というように焦りが生じるかもしれません。しかし、ここはじっくりと落ち着いて「用語=漢字一つ一つ」を紐解いて考えてみましょう。
例を挙げてみると
・成人期と青年期はどちらが先か?
・「生殖期=子供が欲しいと考える時期」は何歳ぐらいか?
というように、紐解くことができれば正しい答えにたどり着くことができるでしょう。
加齢に伴う身体機能の低下を感じている高齢者の心理
加齢に伴う身体機能の低下を感じている高齢者の心理で、次の記述のうち正しいものを1つ選びなさい。
1. 身体機能の低下に対する不安や悲しみを、自分ではなく、友人のことだと考えることで心理的安定を図ろうとすることを、抑圧という。
2. 受け身的、子どものように振る舞うことで心理的安定を図ろうとすることを、投影という。
3. 認知的な活動での優越感を持つことで心理的安定を図ろうとすることを、補償という。
4. 身体機能を使わずひきこもることで心理的安定を図ろうとすることを、退行という。
5. 無意識的に不安や悲しみを抑えることで心理的に安定を図ろうとすることを、逃避という。
正答
3
解説
高齢者に限らず、心理学における基本的な用語を覚えておきましょう。
「投射」・・・他人も自分の態度や感情などと同じものを持っていると思い込むこと。自分自身が認めたくない考えや感情など満たしえない欲求を持っている場合に、それを他人に置き換えて考える事。
「退行」・・・解決困難な状況に遭遇した時人格的な独立性を失い、依存的になることなどをいう。精神発達が止まり、逆の方向、つまり幼児期に戻ることである。
「補償」・・・人間が持つ劣等感やコンプレックスを補おうとする心的機制のひとつ。認知的な活動での優越感を持つことで心理的安定を図ろうとすること。
「逃避」・・・困難などに直面した時に、その場から逃げたり意識から排除したりして、それを避ける事。
「抑圧」・・・自我の安定を脅かす危険のある概念や衝動を無意識的に抑える事、それ自体無意識的な働きであること。
ポイント
選択肢の一つ一つが長めの文章になっているので、読み込む途中で「???」となってしまうかもしれません。このような出題分の場合は、「読みながら区切りやマークを付ける」ことをお勧めします。
例えば選択肢2は、
受け身的、子どものように振る舞うことで心理的安定を図ろうとすることを、投影という。
という具合に、重要な部分だけに目が行くと思考回路もスムーズに動き出しますよ。何でもない簡単な事ですが、意外と見落としがちなコツでもあるので、ぜひ参考にしてくださいね。
まとめ
この分野の出題はどちらかというと、保健医療分野になるため苦手意識を持っている方も少ないかと思います。しかし、間違えやすい専門用語は紙に書きだしたりカードにして繰り返し読むことで記憶に残りやすくなります。
ぜひ試してみてくださいね。
ライタープロフィール
結のそら
むすびのそら。
介護福祉士や介護支援専門員として約20年介護業界に携わる。
取得資格:社会福祉主事、介護福祉士、介護支援専門員、主任介護支援専門員、福祉住環境コーディネーター3級