介護福祉士の資格取得を目指している方のために、昨年度実施された試験からいくつか問題をピックアップしました。
出題範囲が広いためまんべんなく得点出来るようにするには、近年の出題傾向を把握することも大切です。
基礎的な部分の理解がある程度できたら、過去問題を通して出題傾向を掴みましょう。
「介護福祉職の関わり」とは?
問題要点
介護老人福祉施設で生活する70代女性Aさん。
脳血管障害(cerebrovascular disorder)による左片麻痺で、杖を使って自力で移動が可能。気遣いのできる人柄であった。
ある日、食堂の椅子に足が触れて転倒。捻挫をしてしまった。
捻挫は大事には至らず完治したが、その転倒以来歩くことを拒否するように。
理由としては「歩くことが怖い、周りにも迷惑をかけてしまう。」ということだった。
介護福祉職の関わりという観点から、Aさんへの対応として最も適切なものを1つ選ぶ。
1. Aさんにはできるだけ話しかけないように心がける。
2. Aさんの自立を考え、再び歩けるようにあきらめず何度も声をかける。
3. 仲の良い利用者に協力をしてもらい、頑張って歩くように励ましてもらう。
4. Aさんの担当介護福祉職に、再び歩くように説得してもらうよう取り計らう。
5. 食堂の配置を、より安全な状態になるよう見直し、一緒に歩くことを提案する。
正答
5
解説
本試験では事例問題がいくつか出題されます。
この問題では「介護福祉職の関わりという観点から」ということが問われていますので、この点を頭に入れながら問題文を読み進めます。
ポイントとなる部分は、
1.Aさんは食堂で転倒し怪我が治った後でも歩く事を拒否していること
2.「歩くことが怖い、周りにも迷惑をかけてしまう。」と言い、消極的な様子がみられること
の二つになりますね。
選択肢1は「見ないふりをする」ことですので、不安の軽減にはつながりませんね。
選択肢2・.3・4は「励まして歩いてもらうよう説得する・励ます」とありますが、Aさんが不安に感じている原因を解消しないまま、単に励ますだけでは歩くことを強要しているにすぎません。これでは適切な関わり方だとは言えません。
介護福祉職として適切な対応は選択肢5の「食堂の配置を、より安全な状態になるよう見直し、一緒に歩くことを提案する。」です。
Aさんが歩くことを拒否している原因になった転倒事故の再発防止を先に取り組むことで、消極的になっているAさんの不安や遠慮を取り除きます。そして、「一緒に歩いてみよう」と声をかけることで押し付けではない働きかけだと言えます。
事例問題を解くポイント
事例問題は「長い文章からポイントになる部分を読み取る、いかにそのスピードを上げるか?」という点が重要になります。なぜなら、何度も問題文を読み返す事は時間のロスに繋がり、制限時間内に問題を全て解くことや、最後に回答を見直すだけの十分な時間が確保できなくなってしまいます。「あと1点、あと2点」が足りずに不合格になってしまうこともあるのです。
そうならないためにも、問題文を読み込む際には「何について問われているか?1回でポイントを押さえるぞ!」という心構えが大切になります。
コミュニケーション技術の基本
コミュニケーション技術の基本に関する次の記述のうち、最も適切なものを1つ選ぶ。
1. 言葉だけではなく、表情やしぐさにも注意する。
2. 理解できない話には、反応しない。
3. 利用者の発言が正しいか、評価しながら聞く。
4. 良い関係を築くために、介護福祉職が多く発言することが大事。
5. 利用者と家族の意見がぶつかったときは、家族の意見を選択する。
正答
1
解説
ここでは、援助職として大切な「コミュニケーション技術」について問われています。
すでに、介護のお仕事をされている方は普段から利用者の方とのコミュニケーションには気を遣われているかと思いますが、改めて文章になるとどの選択肢が正しいのか迷ってしまうこともあるかと思います。
選択肢2・4・5については、迷わず×をつけることが出来ますね。
選択肢2の「反応しない」ではなく、相づちや頷く事だけでも「相手の気持ちに寄り添う」ことが可能です。
選択肢5は、例え利用者と家族の意見が分かれていても、「利用者の気持ちをくみ取りその代弁をすることが介護職として必要な援助の方法です。
選択肢4については、介護福祉職が一方的に発言するのではなく、「できるだけ聞き手側に回り、相手が自分の気持ちや考えを話しやすいような雰囲気や関係性を築き上げていく必要があります。
さて、一見正答かと思われる選択肢2ですが、「評価する」という部分が間違いポイントです。
介護福祉職は評価するのではなく相手をありのままに「受容」しながら利用者の話を聞く姿勢が大切になります。
【まとめ】
試験では緊張と焦りから「よく知っている言葉」「聞いたことのある用語」をとっさに選び、ひっかけ問題につまずいてしまうということがあります。
ひっかけ問題に惑わされないためには、過去問題を繰り返し解き出題されやすい単元・項目を押さえておくと同時に「分かりづらい言葉の言い回し」「間違えやすい用語の意味」などをまとめておくこともポイントになります。
ライタープロフィール
結のそら
むすびのそら。
介護福祉士や介護支援専門員として約20年介護業界に携わる。
取得資格:社会福祉主事、介護福祉士、介護支援専門員、主任介護支援専門員、福祉住環境コーディネーター3級