介護支援専門員の資格には、運転免許証同様に有効期間が設定されています。
介護支援専門員として引き続き従事するためには、有効期間満了日前に更新手続きを行い必要な研修を受ける必要があります。
介護支援専門員の資格を更新するには?
資格更新時の研修には、
1. 資格更新時に実務に従事している者
2. 過去に従事していた者
3. 従事したことがない者
と大きく3つに分けられます。
また実際に従事していても実務経験が1年以内か、それとも3年以上の経験を有しているかによって研修時間や内容にも違いが出てきます。違いはそれだけではありません。現在設定されている研修時間は、過去の見直しにより大幅に改定されています。例えば資格更新時に行う「専門研修Ⅰ」では過去33時間と設けられていた研修時間が56時間と大幅に増え、同じく「専門研修Ⅱ」でも同様に過去20時間だったものが現在では32時間と増えているのです。
つまりはほとんどの介護支援専門員は、合計88時間の研修時間を受けなければ引き続き業務に携わることができなくなっています。
更新の背景にあるもの
資格更新の背景には、厚労省が掲げる介護支援専門員の資質の向上が謳われていますが、では一体なぜ介護支援専門員の資質向上をここまでして目指す必要があるのでしょうか。確かに、専門職と呼ばれるいかなる役割においてもその専門性を高めていくことは大切なことではあります。しかし厚労省が時間と費用、労力をかけてまで声高に資質向上を叫ぶのは、この背後には少子高齢化問題と膨れ上がる介護保険料の問題が絡んでいるためなのです。介護支援専門員の大きな役割は利用者個人のケアマネジメントと給付管理ですが、この業務の裏では介護保険料すなわち多額のお金が動いています。つまり介護支援専門員は例え一個人であったとしても非常に大きなお金を動かすことができる立場にいるということなのです。加えて、この介護保険料は増えることはあったとしても減ることはありませんから、厚労省としては支出を如何に抑えるかが課題となってくるのです。と、すれば当然その矛先は介護支援専門員に対して向けられるわけなのです。
厚労省の言い分を代弁すると、
「(介護支援専門員が)保険料を請求に対して、相応の根拠と理由を提示することが前提である。だとすれば、一人一人がその専門性を高め、責任あるケアマネジメントを行えるようにならなければない」
ということになります。
介護支援専門員は、時代背景を深く理解し、その上でケアマネジメントの基本である自立支援を如何にして実現できるかという能力が今まさに問われているのです。
更新の内容
さて、更新に際しての研修は、講義と演習を交えながらのものとなります。自身が担当している利用者のケースを基に事例として持ち寄り、ケアマネジメントを振り返りながら、アセスメントやニーズ抽出の方法等実務に必要な能力を養うことを目的としたものもありますが、介護支援専門員としての倫理観やソーシャルワークの概念、機能、目的等を習得、更には地域包括ケアシステムの現状に対する講義等もあります。
また特に重要視されているのは、医療と介護の連携です。研修時間数増加の一つの理由がこの医療に対する理解を深め、医療連携に対する垣根を取り払いたいという狙いがあるためです。「時々入院、ほぼ在宅」という言葉を聞いたこともあると思います。地域ケアシステムの根幹にある住み慣れた地域で長く生活を続けていくためには、地域の病院と密に連携し、シームレスな対応を行える必要があります。介護支援専門員の資格更新ではこういった時代背景も強く反映した濃い研修をしっかりと受けていく必要があるのです。
ライタープロフィール
太郎丸
日本文学系大学卒業後、介護老人保健施設に介護士として就職。
介護士として3年目に「介護福祉士」を取得。
主に認知症介護に加え、口腔ケアや排泄ケアを専門に取り扱うようになる。
後、5年目に「介護支援専門員」を取得し、介護老人保健施設を退職。
退職後、有料老人ホームに介護支援専門員として再就職。
6年間常勤職員として、施設サービス計画書の作成の他、施設の運営等にも関わる。
有料老人ホーム退職後、主任介護支援専門員として地域包括支援センターに常勤職員として勤めるようになる。
現在、国が推し進める地域包括ケアシステムの構築のため、日夜邁進。