第29回の介護福祉士試験に出題された問題文を抜粋してご紹介します。
問題の読み解き方や、正答の導き方など参考にして下さいね。
こちらもご参考ください
第29回(平成28年度)介護福祉士試験 ポイントと解説1
第35問 「自立支援」とは?
自立支援の説明として、最も適切なものを1つ選びなさい。
1. 対象者は,介護保険の要介護3以上の人に限られること
2. 対象者は,意思表示のできる人に限られること
3. ADL(Activities of Daily Living:日常生活動作)を回復すること
4. 経済的自立を目指すこと
5. 自己選択・自己決定を支援すること
【解答】
5.自己選択・自己決定を支援すること
【解説】
介護保険制度に限らず、福祉分野全般においてよく用いられる「自立支援」について、正しく理解できているかが問われている問題です。比較的易しい問題と言えますが、本試験で緊張していたり、焦っているとうっかり引っかかってしまう典型的な問題です。
まず5つの選択肢をパッと見て、よく知っている「ADL」という言葉が目につくでしょう。
「身の回りのことが自分でできるようになる(身体的な自立)=自立支援」と捉えることがありますが、選択肢をよく見ると「ADLの回復」という表現になっていますね。この表現がひっかけです。
回復とは『元の状態になること』をいいますので、老化や病気などで身体に障害を抱えた方が若いころの、もしくは健康な状態に戻るように援助することは自立支援の考え方には適していないと言えます。
障害や病気を持っていても「その人らしく生活できるように」、一人ひとりの状態に合わせて「出来る部分はなるべく自分で、出来ない部分は福祉用具を活用したりサポートを受けることで自立した生活を送ることが出来る」という考え方が自立支援です。
それから、「自立支援」とは、全ての利用者に対して行われなくてはなりません。選択肢1や選択肢2のように限られた利用者だけに自立支援をするという考え方は正しくありません。
自立支援の考え方として最も適切なのは選択肢5の「自己選択・自己決定の支援」です。利用者が自分の意思で考えて選んで決めるという過程がとても大切でありこの自己選択・自己決定がなければ、利用者の自立支援は成り立ちません。
第97問
脳の中で記憶をつかさどる部位として,正しいものを1 つ選びなさい。
1. 延髄
2. 海馬
3. 視床
4. 松果体
5. 小脳
この問題は記憶障害や認知症に関連した問題ですね。保健医療分野が苦手な方は、専門用語を見ただけで「分からない!どうしよう。」と焦ってしまうかもしれませんが、落ち着いて脳の仕組みを思い出してみましょう。
脳は大きく「大脳」「小脳」「脳幹」の3つに分かれています。
大脳・・・ものを考えたり、決めたりする知的な働き
小脳・・・運動をコントロールする働き
脳幹・・・生命(呼吸・心臓・消化・体温調節など)をコントロールする働き
この3つを押さえておくと問題を解く際に正しい答えを選びやすくなります。
選択肢1.
「延髄」は脳幹にあり、呼吸や循環器など生命の維持に必要な機能を担っています。
選択肢2.
選択肢2.の「海馬」は大脳にあり情報を処理する場所で、記憶と大きく関係します。「記憶=海馬」と言われるほど重要な器官で、必要な情報かどうかを判断し長期記憶として大脳へ送り込む働きがあります。
よって、正しい答えは「海馬」になります。
選択肢3.
選択肢3.の「視床」は視覚や聴覚に関係する器官で、何となく「視」の文字で消去することが出来るでしょう。
選択肢4.
選択肢5.の「小脳」は運動をコントロールする役割があり、記憶とは関係がありませんね。
選択肢5.
選択肢4.の「松果体」はあまり聴き慣れないので「???」となってしまいますが、概日リズムを調整するホルモンを分泌する器官です。松ぼっくりの形に似ているのでこの名前が付いたそうですが、「松ぼっくり=ホルモン分泌」とイメージして覚えておくと良いでしょう。
まとめ
いかがでしたでしょうか?
今回はちょっとした言葉のひっかけ、医療分野の読み解き方などをご紹介しました。
日々の試験勉強の参考になさって下さい。
ライタープロフィール
結のそら
むすびのそら。
介護福祉士や介護支援専門員として約20年介護業界に携わる。
取得資格:社会福祉主事、介護福祉士、介護支援専門員、主任介護支援専門員、福祉住環境コーディネーター3級