障害を持っていても地域社会とのつながりを持ち、楽しみや生きがいを持って自立した生活を送るために、外へ出かけることは必要不可欠ですね。今回は障害のある方の外出を支援する「ガイドヘルパー」という資格について、詳しくご紹介します。
ガイドヘルパーとは?
障害を持っている方の中には、一人での外出が困難で誰かの付き添いを必要とする方も少なくありません。ご家族が毎回付き添うことが出来れば理想的ですが、常に側にいることが難しい場合があります。また家族から自立して生活している障害者にとっても、外出支援のサポートは重要です。
ガイドヘルパーは外出に伴う衣類の着脱をはじめ、車いすの介助、公共の交通機関を利用しての外出支援のみならず、外出先での排泄介助、食事介助など介護全般をサポートします。
障害に合わせた外出支援
障害といっても視覚に障害のある方、全身性の障害がある方、また精神・知的な障害を持つ方と様々です。
2013年に施行された障害者総合支援法では、それぞれの障害に合わせた外出支援方法が整備されています。
障害者の外出支援を行う従業者のことを総称してガイドヘルパーと呼びますが、正式には次のような名称になります。
移動介護従事者
全身にわたる運動及び機能障害を持つ方の外出を支援
同行援護従事者
視覚に障害のある方の外出を支援
行動援護従事者
知的・精神・発達障害者の方の外出を支援
介護の資格(初任者研修修了者や実務研修修了者、介護福祉士)を持っている人なら外出の支援はできるのではないか?と思うかもしれませんが、介護の資格所有者であっても視覚障害者や全身性障害者(重度の障害)の外出を支援するには、それぞれの研修を修了してガイドヘルパーとしての資格を取得しなければなりません。
ガイドヘルパーの資格を取得するまで
ガイドヘルパーの資格は、介護福祉士や実務者研修とは違い障害者総合支援制度における資格になります。
自治体や民間スクールが開催する研修を受講することで取得でき最終試験もありません。また、比較的短期間で取得できるため初任者研修と合わせて取得することも可能です。
障害者の外出等を支援するという点は同じですが、それぞれの資格を取得するためには、対象者の障害を理解した上でその特徴に合わせた研修を受講します。
カリキュラムや受講資格などは自治体やスクールによって異なりますので、よく確認しておきましょう。また、介護福祉士や初任者研修修了者、実務研修修了者が受講する場合は、カリキュラムの一部を免除できる場合がありますので、資格所有者は事前に確認しておきましょう。
全身性障害者移動支援従業者養成研修
受講資格:介護福祉士、介護職員初任者研修・実務研修等の取得者
カリキュラム:講義12時間 演習4時間
受講料金:20,000円~36,000円前後
視覚障害者同行援護従業者養成研修(一般課程と応用課程がある)
受講資格:特になし
カリキュラム:(一般)講義12時間 演習8時間 (応用)講義2時間 演習10時間
受講料金:(一般)12,000円~48,000円 (応用)15,000円~35,000円
※同行援護サービスを行っている訪問介護事業所などに勤務する場合には必須資格です。
知的・精神障害者行動援護従業者養成研修
受講資格:特になし
カリキュラム:講義13時間 演習6時間
料金:30,000円~50,000円
ガイドヘルパーの資格はこんな人におすすめ
ガイドヘルパーの資格は、実際に介護現場で勤務している方が2つ目、3つ目の資格として取得する人が増えています。もっと仕事の幅を広げたいと考える人や、転職の際に選択肢を増やしたい人などが取得しています。
また、高齢者介護だけにとどまらず、障害者福祉の理解を深め社会福祉全般におけるニーズを把握する場合においてもガイドヘルパーの資格取得は適していると言えます。
他にもこのような方に資格取得をお勧めします。
・障害者の外出を支援する仕事に就きたい方
・ボランティア活動で障害者と接する機会がある方
・ご家族に障害を持つ方がいて、外出の機会を増やしていきたいと考えている方
資格を活かせる場は?
残念ながらガイドヘルパーの資格に特化した仕事というのはなかなか探しにくいのが現状です。介護職員やホームヘルパーの仕事の一部として移動支援や同行援護、行動援護があり介護に関する資格も所有しているとスキルアップにも繋がり就職や転職に有利です。
居宅介護(訪問介護)事業所
ホームヘルパーとして事業所に登録しているなら、ガイドヘルパーの資格を取得すれば移動支援のサービスも行えるようになります。
介護保険と障害者福祉のどちらにも対応できる事業所であれば、ガイドヘルパーの資格を活かして移動支援のサービスを提供することが出来ます。
入所施設や通所施設
障害を持つ方が入所する施設や通所施設では、買い物やドライブ、お花見、観劇といった外出して取り組む様々な行事を催しています。このような機会には、研修で学んだ知識や技術が活かせるでしょう。
ボランティア活動
仕事としてではなく、ボランティア活動を通して障害者と関わる機会があります。それぞれの障害に合わせたケアの方法を学んでいればコミュニケーションもスムーズになります。
まとめ
私たちが何気なく歩いている歩道やバス・電車などの交通機関は、障害を持つ方にとっては危険を伴うことがしばしばあります。
ガイドヘルパーはその不安を取り除き、いつでも好きな時に安心して外出できる重要な役割を担っているため、今後ますます需要は高まっていくでしょう。
ライタープロフィール
結のそら
むすびのそら。
介護福祉士や介護支援専門員として約20年介護業界に携わる。
取得資格:社会福祉主事、介護福祉士、介護支援専門員、主任介護支援専門員、福祉住環境コーディネーター3級