現場で働く介護職の方にとって、看護師との連携、協力が苦手、あるいは難しいという言葉をよく耳にします。どのような介護現場においても、医療との連携は当然求められてきますし、現代の時代背景としても積極的な連携が必要とされています。
では、何故苦手意識が芽生えてしまったり、難しいと感じてしまうのでしょうか。その理由として、「なんだか怖そう」「こんな事を聞いたら怒られるのではないか」「いつも忙しいそうで、いつ尋ねればいいのか分からない」という看護師という職種イメージが大きく関与しているものと、他にも「看護師は介護の業務を行わないから、協力する気が起きない」という業務内容に対しての不満から来るものに大きく分けられるものと思います。
このような感情が沸き立つ理由に、共通する事柄として「業務への理解」が不足しているという点が上げられます。
シームレスケア
切れ目のないケア、「シームレスケア」という言葉を聞いたことはないでしょうか。介護と医療の連携において特に求められていることです。
利用者の将来像と、現状抱えている課題点をしっかりと共有し、その解決のためそれぞれの専門性を尊重しながら常に途切れることなく、ケアを提供していくことがシームレスケアとなります。そのため必然的に業務への理解が求められてくるわけなのです。相手方の専門性を理解しないままでいると、つい自分の領域を主軸に業務を考えてしまうために、どうしても連携協力という点において摩擦が起きてしまう要因に成り得てしまうのです。
とかく重要なのは、あくまで利用者のケアと課題解決のために、互いの専門性を発揮することこそが本分であるという点となります。
専門性の違い
具体例として、要介護5の寝たきりの方の「褥瘡」(※じょくそう 床ずれのこと)の処置を例に、介護職と看護師の業務の違いを考えてみましょう。
褥瘡処置においては、医療行為が含まれているものですので、医師の指示の下看護師が行うべきとなります。ところがこの利用者はオムツをつけているため、オムツに対する介助が必要となってきます。では一体これは誰が行うべきことなのでしょうか。答えはどちらでも構わないということになります。非常に偏った見方をすればオムツ介助において、処置のため来訪している看護師が行うべき必要が無いということにもなりますが、スムーズなケアにおいて、オムツ介助の度にわざわざ介護職を呼んでいたのでは業務に支障をきたすだけでなく、利用者をただただ待たせてしまうことに他なりません。ではこのオムツ介助の際に排泄介助も同時に必要な状況であったとしたらどうでしょうか。処置のついでに排泄介助も行うのも当然である、という見方をする人もいるかもしれません。これに関しての答えは、あくまで専門性だけで捉えれば「介護職が行う事が妥当」と呼べるかもしれませんが、結局は互いの関係性も関わってくるため一概にこうであるとは言えないでしょう。
まとめると…
・褥瘡処置は医療行為が含まれるものなので、看護師が行うべきもの
・同時に褥瘡処置はオムツに対する介助が必要になるので、介護職の仕事が出てくる
・排泄介助も必要な場合は介護職が行うことにはなるが、一概に言い切ることはできない
・その場に応じて、介護職・看護師相互に理解しながら行うことが必要
歩み寄り
介護と医療の専門性の違いはそこに医療行為が求められるか否かにあるとしても、その線引きに引きずられ過ぎると、互いの職種への理解への不足を生み出してしまう原因にもなってしまうため、職種の垣根を超えた関係性の構築が最も重要なのです。
そこで具体的にどうすれば良いのか。例えば先に上げた褥瘡の例では、介護職として
・「褥瘡の状態を観察したいので、処置を見学させて欲しい」
あるいは
・「処置の際に体位変換が必要だろうから手伝う」
他にも
・「排泄介助の際に、スキントラブルがないか一緒に見て欲しい」
という様々な業務連携の上での提案ができることと思います。
このように敢えて相手方の業務に一歩足を踏み込んでみる、一緒に行う時間を増やすという業務方法が歩み寄りとなり、やがては関係性構築にも繋がっていくのです。
まとめ
看護師は命を預かるという自負から責任感が非常に強い職種です。しかし、だからといって冒頭で述べたようなイメージがイコールとなるわけではありません。人のイメージ像は当人だけでなく、自分自身があの人はこういう人だと無意識に植え付けてしまうものでもあります。実際看護師の方々は気さくな人が多いですし、余程忙しくない限り、業務中であったとしても、それがケア等において必要な質問であればしっかりと答えてくれます。まずは「自分自身看護の事をもっと知りたい」という姿勢をもって看護師に一声かけてみては如何でしょうか。きっと互いの距離が縮まる事と思います。
ライタープロフィール
太郎丸
日本文学系大学卒業後、介護老人保健施設に介護士として就職。
介護士として3年目に「介護福祉士」を取得。
主に認知症介護に加え、口腔ケアや排泄ケアを専門に取り扱うようになる。
後、5年目に「介護支援専門員」を取得し、介護老人保健施設を退職。
退職後、有料老人ホームに介護支援専門員として再就職。
6年間常勤職員として、施設サービス計画書の作成の他、施設の運営等にも関わる。
有料老人ホーム退職後、主任介護支援専門員として地域包括支援センターに常勤職員として勤めるようになる。
現在、国が推し進める地域包括ケアシステムの構築のため、日夜邁進。