母方の祖父母、両親、私と妹の6人で暮らしていました。祖父母ともに寝たきりの期間は半年程で割と短かったのですが、祖母は長いこと認知症でした。自宅の介護の場合、一番大変なのはいわゆる『トイレのお世話』で、するもされるも大変です。最初は祖母と母が親子ならではの関係から、もめることもしばしばでした。
1. 自尊心を大切に
祖母は70歳を過ぎたあたりから認知症と診断され、10年以上をかけて緩やかに進行していきました。排泄が間に合わないというのが目立ち始めたとき「漏らしてる」やら「臭い」やら、ストレートすぎる母親の言葉に、ごまかしながらもしっかり言い返す祖母。おかげで『トイレ』というセリフに祖母は頑なになってしまったのです。それから何をどうすればいいか、病院の先生や看護師さんに聞きながら、家族で試行錯誤していくことになります。
ずっと一緒に住んできた家族ですから、腹が立つこともありますし、それもわかります。でも本人の恥ずかしさや、迷惑をかけるという複雑な気持ちは痴呆症とはいえ感情は残るのですから、そこは大切にしないといけません。
特に誰だってトイレのお世話はしてもらいたくないものです。もし失敗しても責めることのないよう、言葉かけは配慮が必要です。
家族で行う排泄介助のポイント
・排泄はナイーブな問題、言葉では傷つけない。
・扉は全部しめないとしても、プライベートを守る。
・リラックスしてもらう。
2. 工夫してトイレに誘う
もともと祖父母は自宅で仕事をしていたことから、仕事をやめても日常の過ごし方にあまり変化がなく、わかりやすい生活をしていたのです。そろそろかなと思うころ、声をかけてみて「おトイレが混むから、先行っておいでよ。」「きょう、水道がとまるから今のうちに。」など、『トイレ』という言葉に敏感になっていた時期があることから、なぜ今行くかの理由をつけて声かけをしていました。また『はばかりさん』と懐かしい言葉を使うことで、理解しやすさもあったのかうまく誘えたこともあります。
水分はよく取れていましたから、起きている間1日10回ぐらいトイレに行っていた覚えがあります。放っておくとぎりぎりまで我慢することもあるようで、そういう場合は少し気をつけたほうがいいこともあります。足が悪くてあまり歩きたくないことから、うちの祖母は特にそうでした。
家族で行う排泄介助のポイント
・誘って一緒に行くのも1つの手です。
・失敗があったら「体調大丈夫?」や「お茶でもこぼした?」とプライド傷つけないようにします。着替えないことや、脱いだものを隠すなどがあっても介助側の負担にもなるので、丁寧な対応を心がけます。
・脱ぎ着しやすいなど、着るものにも気をつけたいところです。
3. 排泄時間の把握
声をかけるなら2、3時間おきぐらいでしょうか、夜なら寝る3時間ぐらい前から、水分を控えて寝る前にもう一度、誘います。昼間はもう時間を決めてしまって誘ってもいいですし、出ないと言っても行けば割と出ます。
いつもより多く水分を取ってるようであれば、少し早い目にするなど注意が必要ですが、慣れてくればそわそわしているのがわかるようになり、もしかして?とキャッチしやすくなりますので、ある程度のコントロールはできます。
家族で行う排泄介助のポイント
・尿や便のサイクルを細かくチェックすることで、なるべく夜に行かないようにもっていくようにします。
・夜だけパットやリハビリパンツなどを使用する。
・布団に防水カバーをつけておきます。
4. 全部は手伝わない
トイレまで歩くのも運動になりますし、基本的にトイレは人の手を借りたい場所ではありませんから、なるべく自分でできることはしてもらいます。おむつなら周りは楽ですが、本人としては自尊心も傷つきますし、尿意があるならなおさらです。ある程度、手伝いが必要なところだけフォローをします。それにはトイレを少しでも楽にできるよう、環境を整えることも必要です。
家族で行う排泄介助のポイント
・トイレまでの通路や、トイレに手すりをつけたり、歩きやすい配慮を。
・トイレの床には滑り止めをしました。
・スリッパもすべりそう&もたつくようだったのでやめました。
・トイレットペーパーを使いすぎるので、適当な長さに切ったものを用意し、それを使ってもらうようにしました。
5. 助けを借りながら、無理のない介護を
お互いの気持ちが少しでも楽になるのであれば、例えばトイレまでが遠いのなら、近くにポータブルトイレを用意するなどもあります。結局、我が家は嫌がって使いませんでしたが、それを夜だけ使ってもらってもいいのではないでしょうか。先ほど出たパットやリハビリパンツなども夜だけ使うことで、家族の負担を減らすこともできます。
自宅での介護の場合、あまり抱え込まないようにしないと自分がしんどくなります。我が家が家族介護ができたのは、母が専業主婦だったのと、介護に加わることができるほかの家族があと3人もいたからだと思います。1番の悩みはやはり排泄で、それはなるべく失敗のないようにすることでした。それ以外はあまり手がかからなかった祖父母だったと、今ならわかります。無理をせずに訪問介護や、ケアマネに相談し対策を考えてもらうのも1つの方法です。
ライタープロフィール
おちゃみ
ワープロ、パソコンのインストラクターから介護士へ。
特別養護老人ホームでは、介護福祉士の資格を取得し、4年半ほど勤務。
祖父母の介護を10年以上し、自宅で看取った経験を持つ。