私が初めて介護の世界に飛び込んだのは11年程前になりますが、当時男性職員は両の指で数えても余るほどでしたし、特に担当したフロアでの男性職員は私も含め2名しかいませんでした。
当時は運も良かったこともあり、人間関係で大きく躓くこともなく、割とすんなりと打ち解ける事ができたと記憶しています。それでも慣れるまでは日々気は張りつめていたし、理由として現場に流れる独特の空気感にどのように触れていけばいいのか日々模索していたからに過ぎません。
今では男性も多く介護現場の第一線で働いていますから、自分の立ち位置を暗中模索するような事態に陥るような事は少ないでしょうが、それでも風通しの良い職場で働きたいと考えるのは男女関係なく、誰しもが望む事でしょう。職番環境を如何に良くすることは、結果として介護の担い手を増やしていく事にも繋がりますし、更には介護の質にも影響する事ですから決して軽んじるわけにはいきません。
1. お互いの姿勢
では、具体的に良くするためのポイントとして、一つは「姿勢」が上げられます。採用され新しくやってくる人に対して、既存の職員の一人一人が「よくぞ来てくれた」とウエルカムな気持ちで、新たな職員を仲間として受け入れる姿勢がとかく重要になってきます。
余程場慣れした人間でもない限り、採用されたばかりの職員は緊張で身体が凝り固まっていますから、まずはこの凝りを解きほぐさねば本来の力も発揮できないどころか、今後にも繋がらないため、時間をかけてでも慣れてもらえるような配慮と、急がせず、ゆとりを持って接することも、既存の職員には求められてきます。
しかし、この姿勢の在り方はこれから働くことになる人にも当然求められてくるものです。ここで大切なのは、「自分を受け入れてもらう」ための姿勢になってきます。そのためには、やはり自ら率先してコミュニケーションを取る事が求められるのですが、これが一番の難題だったりもします。既に形成されている他人の輪に飛び込むのはかなりの勇気がいりますし、一つ間違えば「なんだか図々しい」ともとられてしまいます。また緊張してそれどころではないかもしれません。ですから、私からお勧めするのは「挨拶だけは自らする」ということです。当たり前の事かもしれませんが、挨拶はコミュニケーションの始まりであり、人となりを知る上でのきっかけにもなることです。例え相手から挨拶し返されなかったとしても気にする必要はありません。少なくとも「自分は率先して挨拶をした」のですから。結局の所、既に働いている人も、これから働き始める人にも、互いを思いやる姿勢が何よりも大切なこととなってきます。
2. 人材育成
働き手の心と姿勢の在り方は職場環境を良くするための基礎ではありますが、現場のシステムを見直すだけでもこの職場環境は当然変化してくるものです。その一つとして人材育成が上げられます。昨今の介護業界はこの人材育成にかなり力を入れ、人材と財として考えるようになっています。やみくもに人材育成を行うのではなく、OJT(具体的な仕事をしていく上で先輩から指導をもらう研修)やOFF-JT(学校や職業訓練施設で行われる教育訓練)、SDS(自発的な勉強を促す環境つくり)等の育成に必要な方法を検討、活用することにより、スーパーバイザーにとってもはっきりとした筋道が見えるようにもなります。人材が豊かな職場は環境も良い傾向にあるのは当然のことではないでしょうか。
3. キーマンを考える
これから働く人にとって、現場でのキーマンと呼べる人と早めに打ち解けておくことは、人間関係構築の上で大きな手段となります。「長い物には巻かれよ」とは古来より言いますが、あながち間違いではなく、人間関係構築の上でやはり「気に入られておく」という事はその後の自分の在り方にも影響することに他なりません。
決して、おべっかや下手に出るというものではなく、自分自身を良い意味で「プレゼンテーション」するという意味合いになります。
もう一つ私自身がこれまで実践してきたこととして、現場にいる看護師と一日も早く打ち解けるということです。一般に看護師の方は「怖そう」というイメージもあり、なんだか近寄りがたいと思われるかもしれませんが、それは一方的な誤解に過ぎません。看護師は職務的に当然命に係るものですので、非常に使命感、責任感が強く、時間や約束事に対しても厳しいのは当然の事なのです。
また日進月歩の医療に対応するため勉強熱心でもあり、常に自己研鑽に励まれているため、あまりにも不勉強であったり、不誠実な事柄に対して厳しい姿勢を取られるのは、これも至極当然のことなのです。しかし裏を返せば、この背景にあるものを理解し接することにより、看護師の方とのコミュニケーションは格段に変化してきます。どんな現場でも重宝される看護師の方と仲良くなることは、その後の自身の在り方を大きく変えることにもなりますし、職番環境を良くするための手段にも繋がっていきます。
まとめ
これを実践することにより、職場環境は絶対に良くなるということはありませんが、それでも基本となる人としての在り方を少し変えるだけで環境に変化は生じてくるものです。他者を変えることは困難を極めますが、自身を変えることは意識付け一つでできる事です。少しだけ自分自身を変えてみることで日々を変えるきっかけになることを締めの言葉とさせて頂きます。
ライタープロフィール
太郎丸
日本文学系大学卒業後、介護老人保健施設に介護士として就職。
介護士として3年目に「介護福祉士」を取得。
主に認知症介護に加え、口腔ケアや排泄ケアを専門に取り扱うようになる。
後、5年目に「介護支援専門員」を取得し、介護老人保健施設を退職。
退職後、有料老人ホームに介護支援専門員として再就職。
6年間常勤職員として、施設サービス計画書の作成の他、施設の運営等にも関わる。
有料老人ホーム退職後、主任介護支援専門員として地域包括支援センターに常勤職員として勤めるようになる。
現在、国が推し進める地域包括ケアシステムの構築のため、日夜邁進。