私は在宅に住む高齢者を対象にケアマネジャーをやっていましたので、様々な高齢者を見てきました。在宅に住む高齢者は大きく分けると
「自宅で最後まで過ごす」「病院に入院をする」「施設に入所する」といった3つのパターンがあります。私が担当していた方々は「施設に入所する」という選択を選ぶ人が多かったです。
ここでは一人の高齢者がどのような過程で施設に入所するのかを、実体験に基づきご紹介していきます。
介護が必要になったAさん
高齢者のAさん(80代、女性)は一人暮らしをしており、脳梗塞を発症してしまいました。なんとか自力で救急車を呼びましたが、救急隊員が着いた頃には意識を失っており、そのまま病院に運ばれました。
Aさんは意識を取り戻しましたが、半身麻痺が後遺症として残ってしまいました。しかしリハビリの甲斐もあり、杖があれば歩けるほどにまで回復をして退院も決まりました。病院のMSW(医療ソーシャルワーカー)はから、Aさんの在宅介護を支援して欲しいと依頼を受けた私は、Aさんの元に伺い、正式にケアマネジャーとして契約を結びました。
そこからAさんの担当ケアマネジャーになったのです。Aさんの困りごとは食事と掃除、洗濯でした。介護保険の訪問介護であればすべてをカバーすることが出来ますので、退院までにAさんの介護申請を済まして、訪問介護も調整をして万全の準備の元退院してもらうことにしました。
将来的なことを見越した対応
Aさんは結婚をしていましたが夫を早くに亡くし、子供もいなく、兄弟も全員他界してしまった身寄りの無い高齢者でした。そのことがケアマネジャーの私にとっては非常に気がかりなことでした。
Aさんがもし認知症になって自分で判断が出来なくなった場合、どのように対応していけば良いのかということ心配していたのです。幸い訪問介護もうまく実施が出来て、Aさんの希望によってデイサービスや訪問リハビリも追加利用するようになりました。独居だったAさんは介護保険のサービスを通して社会と関われるようになったのです。
私はAさんの将来的な部分を見越して、後見人制度を利用してもらうこと提案しました。後見人とは仮にAさんが認知症などによって判断能力が無くなってしまった場合に、Aさんの代わりに判断できる人を決めておくという制度です。
Aさんは心よくそれを承諾してくれ、社会福祉協議会の紹介で社会福祉士の方が後見人になってくれることになりました。
2度目の脳梗塞
在宅生活も3年目に入り安定したAさんでしたが、ある日訪問介護員が訪問をするとAさんは台所の前で倒れていました。2度目の脳梗塞です。すぐに救急車を呼んで、緊急入院となりました。
しかし今回は症状がひどく、ほとんど寝たきりの状態になってしまったのです。私は病院のMSWと相談をしました。リハビリをしても恐らく元の状態には戻らないこと、認知症が明らかに出てしまうこと、在宅での生活は難しいことを聞かされました。
後見人とも相談をするとAさんは以前の会話の中で「もし私が認知症になったら、迷惑をかけてしまう前に施設に入れてほしい」ということを言っていたそうです。
私はAさんが入居できる施設を探すことにしました。幸いAさんは資金がありましたので、地域でも高めの有料老人ホームに入所することができました。
まとめ
厚生労働白書によれば自宅で最期を迎えたい人の割合は55パーセント、病院などの施設は30パーセント、老人ホームは10パーセントにも満たないです。Aさんはきっと自宅で最期を迎えたいと思っていたでしょう。しかし、現実にはそうすることが出来ない状態もあります。
しかし、その場合でも出来る限り自宅で生活を営んでもらうのがケアマネジャーとしての重要な役割だと私は思います。Aさんが自宅で介護を受けながら過ごした3年間は、私にとってもAさんにとっても非常に貴重な時間であったといえるでしょう。
ライタープロフィール
Kokko0320
介護福祉士、ケアマネジャー、社会福祉士を取得しています。
介護についての情報や私の経験談など、現在介護をしている方はもちろん、これから介護を目指している方にわかりやすくご紹介していきます。